月ノ下、風ノ調 - 【創作】星落つる夜 忍者ブログ
月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さんこんばんは、九曜です。
今日も作品アーカイブにいそしもうと思ったのですが、そういえば昨年の発売予定日ワンライで書いた作品を文字化していなかったことに気付き。
半年過ぎてから思い出してしまったのはあれですが、せっかくなので掲載しておきます。

1時間で書いたので、あちこち変ですが、そのまま載せています。
もっと文章力を鍛えなければ…。


暮れなずむ夕暮れが地平線に追いやられ、紺碧の幕が空に垂れ下がりはじめると、その空気がなぜだか懐かしく、どこかほっと落ち着いてしまう。
否、まだ敵は倒しておらぬ、と己の気の緩みを叱責したくもなるが、目指す魔の四島は、まだはるか遠い。
久方ぶりに晴れた海路で、束の間の安らぎを求めていたのかもしれない。
もう少し往けば、やがてこの空も暗雲にすべて覆われ、しばしの別れとなるだろう。

艪を漕ぐ手を休めて、真っ暗な水面に時折映る夕の光を、眺める。
腰に提げた刀は、家宝の波動剣とは違えども、使い込めば期待通りの切れ味を見せてくれる筈だ。
そっと手を掛け、抜き放ち、平たく冷たい鋼の刀身に視線を落とす。
ふと、何かの光がきらりと刃越しに見え、俺は天を高く仰いだ。

――三日月?

そんなわけがない。月は俺が生まれるよりずっと前に、この地上より姿を消したはずだ。
驚き、目を疑っていると、ゆるく弧を描いた光が、すうと潰えた。
もう一度よく目を凝らすと、さらに白色が弧を描いては落ち、暗い夜空を細い光で彩った。

――ああ、流れ星か。

紺碧の夜空に現れては散るそれに、しばし見とれ、刀を納め眺めやる。
それは、この地獄と化した地上を見て、天の流した涙なのかもしれない。
誰かの頬を伝い落ちるひと雫に、流れ星というものは、とてもよく似ていると思う。

流れ星が消えてしまうまでに、願い事を三度托すと叶う、という。
迷信のようなものだろうが、人の祈りを乗せて散る姿は、何かの奇跡を呼び起こしても不思議ではない。
想いは時に、力になる……だが、その力で過去を変えることはできない。

――いくら願っても、兄者たちが戻ってくることはない。

そう俺が思い返すのは、決して諦め歩みを止めるためではない。
むしろ、歩き続けるため、俺自身を前に突き動かすために、何度も、何度でも俺は自分に言い聞かす。

――だから、今は前に進むしかない。

地平線の光が完全に消え、辺りが完全な闇となっても、星を読めば進むべき道は示される。
一度置いた艪を拾い上げ、夜空に光放つ標を見据えて、俺は舟を前へと漕ぎだした。

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