月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さんこんばんは、九曜です。
本日のアーカイブは、以前記事にした『夢醒めた後で』から繋がるお話です。
前の記事でもご説明しましたが、火炎バーンと獄炎バーンが同時に存在する状態で、存在意義を賭けての決着がついた状態から話が始まります。
そういった流れですので死亡描写・表現などありますが、大丈夫な方はどうぞご覧ください。
本日のアーカイブは、以前記事にした『夢醒めた後で』から繋がるお話です。
前の記事でもご説明しましたが、火炎バーンと獄炎バーンが同時に存在する状態で、存在意義を賭けての決着がついた状態から話が始まります。
そういった流れですので死亡描写・表現などありますが、大丈夫な方はどうぞご覧ください。
黒炎に包まれた刃がその体を貫いた時、心の底で俺は後悔していたのだろう。
己の強さと力を絶対のものとするために、袂を別った紅蓮の炎と決着をつける、筈だった。
今、熱い返り血を浴びた右手は、重く凍りついたように動かない。
「これで、良かったの、かもな」
片割れはそうとだけ最後に告げた。
信じられなかった。闇に呑まれた半身に負けておいて、良かったなどと。
薄れやがて失われた緑の瞳の色、どこか慈愛に満ちた眼差しが、目に焼き付いて離れない。
朱に染まった白の鎧、だらりと垂れて動かない両腕と冷え始めた体温。
ああ、『火炎の勇者』は死んでしまったのだなと、確かめるように呟く。
重たい亡骸を抱え上げた俺は、気づけば火口の縁に立っていた。
歩いていた時の記憶がすっぽり抜け落ちている。
片割れを失ったぐらいで、いや自ら刺し殺しておきながら今更、と自嘲する。
視線を落とすと、はるか昔からそこに存在していたのであろう灼熱のマグマが、鍋底を覗いた時のように煮えたぎっている。
落ちればただでは済むまい。竦む足がひとつのくだらない命を繋ぎ留める。
――願いを果たしておきながら「死」を望むのか?
闇に染まってまで求めた意味も、強さも見つけられなかった。
「光の自分」を倒して得たものは、ますます空虚な感情と自分の存在への猜疑心だけだ。
何も素直に受け取れぬ自分に、反吐が出そうになる。
腕の中に抱いた顔に目をくれる。閉じた瞼、血の気を失ったそれを、口元から滴る緋の筋が汚していた。
何故かそれがとても気に障り、自分の黒いマントで口元を拭いてみるが、乾いてこびりついた線は容易くは消えない。
この男が生きていたなら、何と声を掛けられただろうか。
あの性格だ、「そんなムキになって、怖い顔すんなよ」とでも笑い飛ばしたに違いない。
――この男に生きていて欲しかった?
ふと疑問が湧いた。
その問いは、かたちを変えて更に俺にこんな言葉を呼び起こさせた。
――死ぬべきは俺の方だった?
わからない。
火炎の勇者はあの時「これで良かったのかもな」と言った。
だからこれで良いと思いたかったが、目の前の安らかな死に顔が邪魔をする。
どうしたらよくて自分に何ができるのか、勇者が生きていた時には目に見えるものだったのに、手の中の冷たい抜け殻は暗渠に何も灯してはくれない。
マグマが噴いて音が立った。はっとして現実に引き戻される。
いつの間にか振り出した雨が、冷たく体を濡らす。
熱を帯びた雨が姿を変えた、白い蒸気が火口に立ち込めている。
この男を灼熱の海へ放り投げたら、「ほんとうに」「全てを」終わらせられるだろうか。
その答えは不完全なものにも思えた。別に火口に放り投げずとも、崖の上から落としたって、海に投げたって良いというのに。
――火を、熱を、求めているのか?
意識がなくとも足が勝手にここまで来たのは、他でもないそのためなのだと合点がいった。
俺がすべきことは、刺された男の死体を処分することではない。
俺たちは、結局どちらも、火の力を持つ戦士なのであると――。
思うより早く体は宙へと舞った。
『不死鳥の炎だ。俺たちは、もう一度ひとりの「バーン」になるんだ』
今の今なら、あの言葉の意味がわかる気がした。
高温の風が頬に当たる。考える暇があるのが不思議なほど、時が長く感じる。
両腕に抱いた温もりを失った体も、ここではそれが気にならない。
光が、熱が、鼓動が、強くなる。
「大丈夫だ」
そう俺は囁く。
たとえそれが、誰にも聞こえるはずがないと知っていても。
己の強さと力を絶対のものとするために、袂を別った紅蓮の炎と決着をつける、筈だった。
今、熱い返り血を浴びた右手は、重く凍りついたように動かない。
「これで、良かったの、かもな」
片割れはそうとだけ最後に告げた。
信じられなかった。闇に呑まれた半身に負けておいて、良かったなどと。
薄れやがて失われた緑の瞳の色、どこか慈愛に満ちた眼差しが、目に焼き付いて離れない。
朱に染まった白の鎧、だらりと垂れて動かない両腕と冷え始めた体温。
ああ、『火炎の勇者』は死んでしまったのだなと、確かめるように呟く。
重たい亡骸を抱え上げた俺は、気づけば火口の縁に立っていた。
歩いていた時の記憶がすっぽり抜け落ちている。
片割れを失ったぐらいで、いや自ら刺し殺しておきながら今更、と自嘲する。
視線を落とすと、はるか昔からそこに存在していたのであろう灼熱のマグマが、鍋底を覗いた時のように煮えたぎっている。
落ちればただでは済むまい。竦む足がひとつのくだらない命を繋ぎ留める。
――願いを果たしておきながら「死」を望むのか?
闇に染まってまで求めた意味も、強さも見つけられなかった。
「光の自分」を倒して得たものは、ますます空虚な感情と自分の存在への猜疑心だけだ。
何も素直に受け取れぬ自分に、反吐が出そうになる。
腕の中に抱いた顔に目をくれる。閉じた瞼、血の気を失ったそれを、口元から滴る緋の筋が汚していた。
何故かそれがとても気に障り、自分の黒いマントで口元を拭いてみるが、乾いてこびりついた線は容易くは消えない。
この男が生きていたなら、何と声を掛けられただろうか。
あの性格だ、「そんなムキになって、怖い顔すんなよ」とでも笑い飛ばしたに違いない。
――この男に生きていて欲しかった?
ふと疑問が湧いた。
その問いは、かたちを変えて更に俺にこんな言葉を呼び起こさせた。
――死ぬべきは俺の方だった?
わからない。
火炎の勇者はあの時「これで良かったのかもな」と言った。
だからこれで良いと思いたかったが、目の前の安らかな死に顔が邪魔をする。
どうしたらよくて自分に何ができるのか、勇者が生きていた時には目に見えるものだったのに、手の中の冷たい抜け殻は暗渠に何も灯してはくれない。
マグマが噴いて音が立った。はっとして現実に引き戻される。
いつの間にか振り出した雨が、冷たく体を濡らす。
熱を帯びた雨が姿を変えた、白い蒸気が火口に立ち込めている。
この男を灼熱の海へ放り投げたら、「ほんとうに」「全てを」終わらせられるだろうか。
その答えは不完全なものにも思えた。別に火口に放り投げずとも、崖の上から落としたって、海に投げたって良いというのに。
――火を、熱を、求めているのか?
意識がなくとも足が勝手にここまで来たのは、他でもないそのためなのだと合点がいった。
俺がすべきことは、刺された男の死体を処分することではない。
俺たちは、結局どちらも、火の力を持つ戦士なのであると――。
思うより早く体は宙へと舞った。
『不死鳥の炎だ。俺たちは、もう一度ひとりの「バーン」になるんだ』
今の今なら、あの言葉の意味がわかる気がした。
高温の風が頬に当たる。考える暇があるのが不思議なほど、時が長く感じる。
両腕に抱いた温もりを失った体も、ここではそれが気にならない。
光が、熱が、鼓動が、強くなる。
「大丈夫だ」
そう俺は囁く。
たとえそれが、誰にも聞こえるはずがないと知っていても。
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