月ノ下、風ノ調 - 【オレカ二次創作】反転ドーピング薬 忍者ブログ
月風魔伝その他、考察などの備忘録。
今日も元気にモンスター烈伝!…という状態になってる九曜です。

アーカイブが続いている状態であまりよろしくないのですが、いざ記事を…と勇んで書き始めたものがあれよあれよという間に10KBを超えてしまい(※素のtxtファイルですのでかなりの物量です)しかもまとまってくれないという体たらく。
ブログを立ち上げてから3年目になると思うのですけれども、最初の2年ぐらいで飛ばしすぎたんだと思ってやってください。今独眼独頭調べてるのでお願い許して。

最近、オレカでオレ最強大合戦劫火の陣のリバイバルがありましたが、今回のお話はいつぞやの同イベント(火土・風水連合軍での大合戦)で登場した「反転ドーピング薬」のお話です。
このアイテムは「使ったモンスターの★数が少ないほど強化される」という効果を持ち、★1や★2のモンスターに使うことで、いっぱしの戦力になってくれます。

そんな面白いお薬ですから、ついついネタが思いついてしまい…という経緯で書きました。
お話はラフロイグ軍(火・土連合軍)視点で進みます。




かつて魔界、いやオレカワールドを二分した、大きな戦があった。
大魔皇ラフロイグは大魔皇トカイと手を組み、相対するクジェスカ・マオタイ連合軍を打ち破らんと、火属性のモンスターたちの指揮にあたっていた。

「反転ドーピング薬?」
「そう。私たちのと~っておきの研究成果だヨ」

どこか楽しそうだが、含みのある口調で話す、包帯に巻かれた顔。
死霊使いと呼ばれる男の『研究成果』とやらがどんなものであるかは、よく知らない煉獄の者たちにとって未知数だ。
なおも笑い続ける男を訝しげに一瞥して、魔将ガープはふんと鼻を鳴らした。

「こいつを飲めば、小さくて頼りなさそうなモンスターほど、とんでもない力が出るのさ。ヒッヒッヒッ」

その隣にいる、体格の良い老魔女ギャミスも、ワイトと大差ない態度で怪しい薬の説明を始める。
いわく、小さい魔物ほど力の増す薬、という。
大柄で体力のある者はともかく、下級の兵や小さな魔物まで戦に駆り立てるとなれば、その響きは魅力的であった。

「いかがなさいます、ラフロイグ様」
「決まっている。貰おう」

緋色の皇座にどっかりと座るラフロイグは、頬杖をついて赤い目を煌々と光らせ、友軍の『研究成果』に興味深々のようだった。
顔はすっかり闇で覆われているが、長いこと仕えてきたガープには、ラフロイグの思惑も容易に見て取れた。
小さい魔物ほど、ということであれば、大きなリスクを背負って試す必要もない。適当な兵卒を試験台にすれば済む話だ。
早速、こちら側の適当な魔物を見繕って、ラフロイグは戦場へと赴くことにした。

*  *  *

「ふんっ! 邪魔だ、どけ!」

小柄な体が繰り出す会心の一撃は、充分に見えるものの、決め手に欠ける威力ではある。
悪魔剣士の子、パズを連れて戦いはじめたラフロイグは、側近のガープとともに、薬を使う機会をうかがっていた。
パズは悪魔剣士の中でも上位の出身で、ラフロイグにも媚びへつらうような態度はとらない。
その点は評価しているが、あまりに尊大な態度に時々苛立つこともあり、ガープは件の秘薬で恩を売りながら、失敗時には放逐することを密かに勧めた。

体力が削れてきた頃合いを見て、ラフロイグは懐からおもむろに、秘薬の入った袋をパズへと差し出した。

「こ、これは……?」
「使うがいい。友軍から来た支援物資だ」

星の形をしたそれは、割って咀嚼する類のものらしく、付き添いのガープがそれを丁寧に説明する。
パズは一瞬、不安そうな顔になったが、まさか己が実験台になるなど思ってもいないらしく、渡された欠片を音を立てて噛み砕いた。

「お、おおっ! これは――」

淡い光が湧き立ち、パズの表情が鋭気あふれたものへと変化する。
どうやら「騙された」わけではないらしく、パズはその身に似合わぬ力を手に入れた。と、思われた。

「ありがとうございます、ラフロイグ様! なぜだか心に羽が生えたようです! 一生ついてゆきます!」

にこやかに笑い、はきはき喋るのを見たガープの眉間に、シワが寄った。

(この者、こんな溌剌としてはいなかったような気が)
(薬のせいか?)

ラフロイグの顔近くで、そんな会話が交わされる。
パズはそれを気にする様子もなく、剣を振りかざし、目前の相手に宣戦布告を告げる。

「ラフロイグ様の野望を邪魔する者は、この剣にかけて、パズが許さん!」

思わず噴き出しそうになるのを堪えるラフロイグと、堪えきれず咳払いのふりをして誤魔化すガープがその背景に立つ。

「さあっ、いきますよ!!」

その掛け声に、とうとう堪えられなくなったラフロイグが肩を震わせ、クハッと小さく声を漏らす。
ブレイジング・ブラッドを撃とうとした手の狙いが定まらないでいると、隣のガープもボルガノンの詠唱を間違えたらしく、首を捻っていた。

「はあーッ! やあっ!」

めざましい活躍を見せながら、性格まで「反転」してしまったパズを見て、ラフロイグは腕組みをする。
敵軍は見事に掃討され、あとは帰還するだけだ。
まあ、別に、このままでもいいか……などと自分を納得させていた時、突然パズが地面にばたりと倒れた。

「ぱ、パズ……? どうした!」

ラフロイグみずから、驚いて駆け寄るが、パズはぐったりして動かない。おおかた、これも薬の副作用なのだろう。
とは言え、これほどの活躍をした者をすっぱり見捨てるのも、なんとなく気が引ける。
躊躇いがちに手を伸ばそうとした時、うつぶせの後頭部から、泡のはぜるような弱弱しい声が聞こえた。

「ふっ……あなた様のために死ねるなら……俺は本望……」

その言葉は突然ラフロイグの胸を突き、自分が配下を持つ上官、いや皇たる立場であることをふつふつと思い出させた。
捨て駒の実験台などどうなっても良い、という考えは雲散霧消し、ラフロイグはこの者を救うことに決めた。

「……ガープ! 急ぎ手当だ!」
「はっ! エナジーフィール!」
「誰か、回復魔法の使える者はいないかッ!!」

戦いはもう終わったというのに、その場はにわかに慌ただしくなった。

*  *  *

後日、合戦でラフロイグとトカイの連合軍は大勝を果たし、臣下には褒美が配られていた。
褒章の授与については、友軍の配下であるデュラハンやカーミラらが手伝ってくれ、ラフロイグは後日トカイに改めて礼を言おうと、その辞にも頭を悩ませていた。

そんな時であっても、ラフロイグはまだ目を覚まさない、パズのいる救護室に足を運んでいた。
尖兵でしかないパズに大将のラフロイグが付き添っていることは、あらぬ噂も立ったものの、ガープの『一兵卒も大事にする将』という訂正が功を奏し、今では好評価であるらしかった。
自分の掌ほどしかない顔、開かない瞼を見つめていると、部屋の戸が三度鳴った。

「入れ。……ガープか」
「ラフロイグ様、ここに居られましたか」

会話はそこで途切れ、二人とも何を言い出したものかと、思案しているようだった。
なぜこの男を救おうと思ったか、あの薬の効果は果たして良かったのか、そして何よりパズが助かるのか……。
ラフロイグの胸中にはさまざまのものが渦巻き、またガープもそれを汲んではいたが、言い出すも指摘するもままならず、ただただ、静かな時が過ぎた。

「う、う……」

その空間に呻き声があがり、ラフロイグの視線はたちまち、そちらへ引き付けられて落ちる。

「パズ、無事か?」

此方へ戻ってこい、冥府へ行くなと、声が不安の色を奥底に秘める。
やがてうっすら目を開いたパズは、ゆっくりと身を起こし、ラフロイグの方へようやく焦点を合わせた。
大魔皇たる緋色の瞳は、煉獄の主らしくもない情けにあふれた、淡く穏やかな光に変わっている。
だが、その光も、あっという間に失われた。

「俺を助けたのか……? フン、大将というのは、思ったより暇なのだな。礼ぐらいは言ってやる」

パズの言葉に、ガープの顔が引き攣る。
どうも、例の薬、反転ドーピング薬の効果がすっかり切れたらしく、パズは自分が助かったことにもさして興味ないという風に、腕を組んで鼻を鳴らした。

ラフロイグは行き場のない感情を込めて、右手に持つ杖の柄で、思いきり床をドスンと衝いた。

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