月風魔伝その他、考察などの備忘録。
みなさんこんばんは、九曜です。
先週、月曜に更新環境が整わなかったせいで突然休んでしまいましたが、元気ですのでご安心ください。
本日はなんと『月風魔伝』の創作です。UMじゃないです、原作風魔伝。
月氏は三兄弟が地上を統治していたとの話がありますが、今回は「領地を初めてもらった頃の風魔君」でお話を書いてみました。月風魔十九歳なりたて、迫る魔暦元年ということで、ややダークな仕上がりとなっております。
よろしければ追記よりご覧ください。原作風魔伝の話ですが、UMの要素もちょっと出てきます。
先週、月曜に更新環境が整わなかったせいで突然休んでしまいましたが、元気ですのでご安心ください。
本日はなんと『月風魔伝』の創作です。UMじゃないです、原作風魔伝。
月氏は三兄弟が地上を統治していたとの話がありますが、今回は「領地を初めてもらった頃の風魔君」でお話を書いてみました。月風魔十九歳なりたて、迫る魔暦元年ということで、ややダークな仕上がりとなっております。
よろしければ追記よりご覧ください。原作風魔伝の話ですが、UMの要素もちょっと出てきます。
ある異変
夜が泣いている。耳で聞くことこそできないが、肌に当たる生温い風と、鼻腔をかすめてゆく鉄の臭いが、いくつもの嘆きを取り巻いて、漠々たる闇夜を満たしている。
一度抜き放った刀の先を、力なく地に向け、俺は茫然と立ち尽くしていた。
(嗚呼、ひとが、我らが、一体何をしたというのか!)
夕刻、傷だらけで命からがら逃げてきた男は、村が化け物に襲われている、とだけ呟き事切れた。すぐさま刀を携え、半刻とも断たぬうち駆け付けたはずだが、もはや村は村の形を保っておらず、崩された家の残骸と、大小いくつもの亡骸が俺を迎えた。普段は農地で耕作に励む男も、ちいさな店の軒先で笑顔で迎えてくれた娘も、生まれたばかりの赤子さえ、すべて平等に命を刈り取られ、抜け殻のようにそこいらへ転がっていた。それらの中には、針鼠のようになるまで矢を受けたものもあった。
細い月の頼りない明かりが、地面に転がった遺骸の形ばかりを薄っすら、浮かび上がらせる。「化け物」の姿はないが、いつ何時襲われてもおかしくないという思考が辛うじてはたらき、俺はほとんどぶら下げていた刀を握り直した。
「兄者に伝えねば――」
口をついて言葉が漏れた。同時に、しまった、と思った。
月一族の三兄弟のうち、俺は末子にあたる。上に二人の兄がいて、三人で力をあわせ、いくつかの島国と、そこに住まう民を統治している。身の丈も伸び、剣技や武術をあらかた習得し終えた俺は、昨月で齢十九となった。このちいさな領地も、成人のあかしとして、兄たちから「譲り受けた」ものだ。尻に殻のついた雛鳥のように、甘えれば教えてくれるなどという考えは、そろそろ捨てねばなるまい。
無論、俺より長く生きている兄ふたりはどちらも、俺が学ぶべきものをたくさん持っているし、何かあれば助け合うこともある。しかし、いつまでも兄者たちに、何かと頼ってばかりの己ではいけない。そう、思った。
(いや、まずは……「化け物」を探す)
領地で起こる困り事は、境界争いや収穫物の過不足、野犬の襲撃など多岐にわたったが、それにしても今回は「化け物」というのが気にかかる。村がこの有り様では、化け物の仔細を調べる手立てもない。唯一残された手段があるとすれば、それは俺が「化け物」を探し出すことであろう。廃屋の間を歩きまわり、土の地面が砂利に変わった頃、異変があった。
「……」
ざり、ざり、と砂利を踏み鳴らす足音が、どうも己以外にもうひとつ、遅れて聴こえてくる気がする。悟られぬように早足になると、その足音もやや遅れて、重たそうについてくる。距離はおよそ二間あるかないか、突然踏み込んで斬りかかられる距離でこそないが、さりとて遠ざかる気配もない。嫌な予感に歩みを止め、刀を両手で構える。
じゃりっ、と異形の足音が鳴った。きりきりと何かを絞る音に、振り返るや、ひゅんと顔の真横を何かが掠める風切り音。頬についた一筋が血を滴らせても、痛みを感じる暇さえなかった。二の矢を早くも構えているその者の、月夜に照らされた顔は真白いされこうべで、弓を握る手もまた白い骨の節ばかり、右肩の千切れた胴丸をぼろきれのように身に纏った、亡霊武者であったのだから。
息を呑む。これまで領地で見て来た化物は、女の顔に蛇の胴を持つ沼御前か、岩に魔の宿った邪心岩石、それに鬼の首が離れ飛ぶようになったと言われる鬼妖霊ぐらいだ。骸骨の亡霊武者など、兄らの領内でも事件となった話は聞かない。
次の一矢が左肩を掠めた。その目はがらんどうの深い闇であるはずだが、狙いは驚くほど正確で、射線が鎧の肩当ての隙間を的確に縫った。鎖帷子を着込んでいなければ、刺さっていたかもしれない。
構えていた剣先を少しずつ下ろしながら、ざりざりと後ずさる。三の矢がつがえられる前に、八艘飛びでもする勢いで後ろへ跳び退き、納刀を済ませひらりと身を翻して、俺は逃げ出した。敵に背を見せるのは本意ではないが、ここで迂闊にやりあって死んだのでは、死に恥を晒す、ひいては兄者たちの顔に泥を塗ることにしかならない。骨ばかりの腕ではさほど矢も遠くへ飛ばないのか、追いかける足音が重たいせいか、三の矢が飛んでくる気配はなく、俺は無我夢中で山合の林へ飛び込んだ。
(「化け物」の正体がわかった。……今は、これでいい)
頂いた領地を化け物にまるごと滅ぼされたなどとあっては、合わせる顔もないところだが、つまらない意地を張ったところで、この化け物が好き勝手できる場が増えてゆくだけだ。兄たちを軽率に頼らないというのは、決して一人でものごとを解決することではない。ほんとうに一人になった時のために、兄たちの知恵も力も借りて、今はこの異変を解決することが先だ。
まだすさび泣いている夜の、寂寥とした真中を風の如く突っ切って、俺は兄たちの住まう屋敷へ駆けた。鉄の臭いは森の芳香に溶けゆき、狼の遠吠えが哀し気にこだました。
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