月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さまこんばんは、九曜です。
来たる2/10のワンドロライを控え、省エネ運転のため、本日はアーカイブとなります。
今回の作品はオレカバトルの、流水の騎士フロウに関わるお話です。
オレカで好きなキャラクターというと、フロウ王子はゲスト勢を除けば真っ先に挙がるぐらい好きなキャラクターなんですが、実はお話の題材として選ぶことがあまりなかった気がします。
リハビリがてら、短編とかまた書きたいですが、それはまたの機会に。
ちなみに風魔君もそうなんですが、フロウ王子も絶望スタート、鉄壁の鋼メンタル、統治側、正統派進化しか持たない(オレカ主人公勢には珍しく闇堕ち派生のない)完全に善寄りタイプで、好きになるべくしてなったなぁと思うことがあったりもします。
来たる2/10のワンドロライを控え、省エネ運転のため、本日はアーカイブとなります。
今回の作品はオレカバトルの、流水の騎士フロウに関わるお話です。
オレカで好きなキャラクターというと、フロウ王子はゲスト勢を除けば真っ先に挙がるぐらい好きなキャラクターなんですが、実はお話の題材として選ぶことがあまりなかった気がします。
リハビリがてら、短編とかまた書きたいですが、それはまたの機会に。
ちなみに風魔君もそうなんですが、フロウ王子も絶望スタート、鉄壁の鋼メンタル、統治側、正統派進化しか持たない(オレカ主人公勢には珍しく闇堕ち派生のない)完全に善寄りタイプで、好きになるべくしてなったなぁと思うことがあったりもします。
崩壊した水の国の生き残りや新たな仲間を捜し出し、その再建を願う王子フロウは、今日も宛てのない旅を続けていた。
無二の親友であるケルーと再会し、魔海に君臨したアズールと父の仇フィスカを倒した彼は、心を持ったロボット達をも仲間に引き入れてはいたが、まだまだ再建への道のりは遠かった。
今朝は日が昇ってから、かれこれ3時間は歩き通したろうか。アシリア近海の砂地、浅瀬に広がる海藻畑を眼下に、フロウ一行は束の間の休息をとることにした。
水場の好きな幻獣ピィが、主人であるケルーを乗せて水浴びをしている。ケルーは座って休みたい反面、やんちゃなピィを一人にするわけにもゆかず、付き添って背に跨っている。
岩場の一角に腰かけ、そんな光景をほほえましく眺めていると、隣にいるロボ壱式が声をあげた。
「フロウ、フロウ。南方50メートル、深度40メートルニ、エネルギーヲ探知シマシタ」
「えっ?」
壱式の声に沿って、海中に目線を落とす。
浅瀬が深くなるあたり、海の奥に、確かに青い光が見えた。
「何だ……あの光……?」
透き通る浅水色の海深く、サファイアのように煌めく光は、心なしか自分を呼んでいるようにも見える。
ゆらゆら揺れる光をぼーっと見ていると、ケルーが声を掛けてきた。
「フロウ?」
「ケルー、ピィ、ここで壱式と待っていてください。僕が調べてきます」
「調べてって、何を……待ってよ、フロウ!」
ケルーが引きとめるより早く、青の鎧を纏った騎士の姿は、水面に白い波紋を残して消えた。
フロウを追うため、ケルーは慌てて、ピィの背中をせかすように叩いた。
* * *
深く深く潜ってゆくと、光はますます強くなり、やがてそれを囲むように古びた遺跡が見えた。
水の国の末裔であるフロウは、水中でも多少は呼吸ができるから、すぐ息が切れる心配もない。そのまま、遺跡の中へ泳ぎ入る。
周りはとても静かで、何の気配もない。こんな所に遺跡が、とフロウは思った。
水の国に居た時、前王である父に連れられ近海を巡ったこともあったが、こんな辺鄙な場所に建物のあった記憶などない。
次の扉を潜ろうとすると、差し出した手が空を切った。どうやら、魔力で浸水を防いでいるらしい。
機能している町か、強い魔力で覆われた城あるいは神殿でしか見ない仕掛けに、フロウはますます訝しんだ。
床に足をつき、背負った槍を手に取る。いつでも戦えるよう、警戒しながら歩く。
そうして遺跡内を見回しているうちに、あることに気付いた。
(この遺跡……水の王国の、宮殿……?)
柱の形や階段の造りが、回廊の構造が、在りし日の王宮を思い起こさせるものだったのだ。
無論、もう滅びた水の国が、そっくりそのままの形で、この場所にあるはずもない。
答えを探すフロウの前に、ひとつの扉が現れた。
(光は、ここから……)
扉の隙間から漏れる青の光。
なかなか重い手ごたえではあるが、自力で開けられそうだ。意を決し、両手で扉を押す。
視界が、ただ一色の、青に染まる。
* * *
ようやく物のかたちを認識できるようになり、そこでフロウが見たものは、古ぼけた写真のような、色あせた空間だった。
そして、部屋の奥に配置された王座にどっかと座る魔王と、その前に跪く部下らしき悪魔には、覚えがあった。
「魔王アズール……魔海将フィスカ!?」
フロウがこれほど驚くのも無理はなかった。アズールも、フィスカも――この手で既に、討ち果たしている。
思わず叫んだものの、目の前の二人はまるでフロウがその場にいないかのように、やりとりを続けていた。
『やはり、王座の座り心地は格別だ。フィスカ、お前が水の国を見事制圧したこと、心から誇りに思うぞ』
『滅相もありません。私はアズール様の命に従ったまで』
これは過去の記憶なのだと、フロウは直感した。今の場面は、祖国が滅んだすぐ後なのだろうと。
あの青い光の見せているまぼろしなのか、ほんものの過去を見ているのかは、今はわからない。
『……アズール様。魔海では、あまりに多くのものが失われました』
そう切り出すフィスカに、もやもやした感情が渦巻いた。
他でもない、この二人こそが「多くのものを失わせた」のだと――そう言いたげな厳しい眼差しで、フロウはその場に立ち尽くす。
何を喋っても聞こえていないだろうことが、歯がゆく感じた。
『私は、長年の時を生きた悪魔。海はその潤沢な資源で人間を呼び、あるいは未知のものを求める人間を引き込み、結果多くの人命・生命が潰えるのを、ずっと傍で見てきました。アズール様ほどの力があれば、海に平和を取り戻せましょう』
「平和を取り戻す」?
平和な国を滅ぼし肉親を殺し、多くの命を奪っておいて何を――唇を噛みしめ、フロウはますます険しい顔になる。
しかし続く言葉で、その表情が、俄かに崩壊した。
『海に王国など、一つあればいい。それが人々に畏怖されるものとして、永遠に誰も寄せつけぬ堅固な城塞となれば……やがて、多くのいのちが救われます』
『そうか……』
フロウはすっかり色を失った。仇敵の目指す方向には、魔海にとっての「平和」が確かに存在していたのだ。
そのために、父や多くの者が死んで、祖国が滅んで良かったなどとは思わない。しかし、フィスカの持論はいたく理にかなっていた。
自分がこのまま王国を再建したとして、果たして本当に、魔海に平和が訪れる礎となれるだろうか?
「やってみなければわからない」――いつもならそう言い聞かせ、奮い立たせてくれる自分の心が、今は冷たくおし黙ったままだ。
うつむき、考えを整頓しようとした、その時だった。
『小魚が紛れ込んでいるな。貴様も冥土送りにしてやろう』
突然フィスカの槍の切っ先が、背後で立ち尽くしていたフロウの喉元に迫る。
まったく見えていないものだと思って、完全に油断していた。この距離では槍を取り回すにも時間がかかる。
死を覚悟し、フロウは強く目を瞑った。
* * *
「フロウ! 起きてよ、フロ……いてっ!」
「うわっ!? け、ケルー?」
身を起こしたフロウの額当てが、ケルーの額にごつんとぶつかった衝撃で、視界に色が戻った。目の前にはフィスカも、王座に座るアズールの姿もない。
代わりに先ほど頭突きをされたケルーが、額を押さえてたいそう痛がっているのが見えた。それを心配するピィと、「オハヨー、フロウ」を連呼する壱式……。
「すっ、すみません! 急に起きたりして」
「い、いや……無事で良かったよ。フロウが溺れるなんて、一体どこまで潜ったんだ?」
「溺れ……ぼ、僕がですか?」
溺れた記憶はない。フロウは青い光と、海中の遺跡の話をしたが、ケルーとピィには「この近くにそんなものはない」と返され、首を捻った。
アズールとフィスカの話は――言い出せなかった。
「壱式、僕に言いましたよね? エネルギーを探知、って……」
「ピピ、メモリー検索中……『エネルギー』……『探知』……該当データ、ナシ」
「あ、あれっ?」
壱式のあの言葉すら、白昼夢か何かだったらしい。
そんな馬鹿な、と思う反面、あの出来事が単なる夢なら、それはそれで望ましい気さえした。
しかし、こちらに槍を向けたフィスカの鋭い眼を思い起こすと、身震いがし、動悸まで襲ってくるようだ。
「きっとフロウ、気が張って疲れてるんだよ。もうちょっと、ゆっくりしていこう」
深く息をつき、顔色の優れないフロウを心配してか、ケルーがそんな声を掛ける。フロウは厚意に甘えて、もう少し休んでいくことにした。
空は青く、太陽が高い。そろそろ、正午も回る頃だろう。
海水で濡れた体を乾かすがてら、見覚えのある形の岩に、元のように腰掛ける。
水面に照り返す光の合間、あの青い不思議な輝きは、探しても二度と見つかることはなかった。
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