月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さまこんばんは、九曜です。
本日は3/4、ちょうど昨日は桃の節句だったのですが、節句らしいことを特に何もせず、いつも通り狩猟に赴き、普段通りの一日が終わりました。
で、たまには季節ネタもやりたいと思い、今日は「創作」です。ものすごい短編ですが。
今日のお話は、ED後、当主兄弟も蓮華も館に無事戻ってきたという前提で、兄弟が蓮華さんのために「桃の節句」の準備をするお話です。
ところがこの兄弟ときたら…続きは本文にてお楽しみください。
本日は3/4、ちょうど昨日は桃の節句だったのですが、節句らしいことを特に何もせず、いつも通り狩猟に赴き、普段通りの一日が終わりました。
で、たまには季節ネタもやりたいと思い、今日は「創作」です。ものすごい短編ですが。
今日のお話は、ED後、当主兄弟も蓮華も館に無事戻ってきたという前提で、兄弟が蓮華さんのために「桃の節句」の準備をするお話です。
ところがこの兄弟ときたら…続きは本文にてお楽しみください。
桃の節句
月氏の館、栄月2年。地獄の邪神を倒し、当主らが帰還した時より早や一年が経とうとしていた。館は清々しいほどの青空に鮮やかな紅の花が咲き誇る、桃の季節であった。当主である27代月風魔とその兄・嵐童は、宝物殿の書棚より引っ張り出した巻物の前で二人、肩を並べて唸っていた。
「兄上。『雛人形』とは、どういうものだと思われますか」
「私にも皆目見当がつかぬ。雛というのだから……鳥か……あるいは何か……」
地獄より救助され、館へ招いた21代当主の蓮華を『桃の節句』でもてなすため、その準備をするための相談であったが、この兄弟は他に女のきょうだいを持たなかった。女の子の無事を願う節句とは無縁のまま育った男二人では、この相談に正しい結論が出るわけもなく、話はどんどんあらぬ方へ逸れてゆくのであった。
「鳥……そういえば、地獄には死蘇鳥という魍魎がいました。あれは鳥といって間違いありませぬ」
「成程、その『雛』を模した人形を……其方、どのような姿であったか覚えているか?」
「確か、魍魎絵巻の……」
そんな折、宝物殿にやってきた人影を見て、二人の手がはたと止まった。蓮華は二人の相談事には我関せずの顔で、書棚から歴代当主年表を拾い上げて、すぐ踵を返し去って行った。
「……今、『雛人形』について、聞いてみればよかったですね」
ぽつりと風魔が言った。言われてみれば、蓮華は少なくとも、本来自分の生きていた時代に『桃の節句』を経験していてもおかしくはなかった。別に当人に伏せているわけでもなし、素直に相談をすれば良かったのであるが、聞いたら聞いたで手を煩わせてしまう不安もあり、声を掛けそびれたといったところだ。
機を逃したのでは仕方なしと、嵐童は魍魎絵巻に手を伸ばし、広げた。目下すぐに堕ちていた頃の己の姿が映され、溜息混じりに紙をいくらか巻き直して、死蘇鳥の絵姿を探すのであった。
明かりが灯り、朧月夜に桃の紅色も薄らとその影だけを落とす頃、蓮華は夕餉のため大広間に呼ばれた。箱膳にはいつもより少し豪華な熟(な)れ鮨と、豆の煮つけと厚焼きの玉子。そして、四角く切られた焼き餅が2枚、平皿に盛られていた。
鮨と餅の取り合わせもじゅうぶん奇妙だったが、さらに蓮華の目を惹いたのは、立てられた大きな金屏風の前に、鳥の人形が無造作に置かれていることだった。本物の鳥の羽で作られているわけではなく、端切れか何かを縫い合わせたような頭に、黒い衣留めと思しきもので目を模している。お世辞にも精巧とはいえないそれが、ちょうど赤ん坊が足を広げて座るような恰好で、大人しく鎮座していた。その前には丁寧にもちいさな御膳が用意されていて、蓮華や皆の食べるものと同じものが一口ずつ添えられている。
「21代様。今日はどうかゆるりと、楽しんでくだされ」
「口に合うかはわかりませぬが……精一杯の馳走を用意しましたゆえ」
当主兄弟からそんな言葉がかけられたのを見るに、どうやら今日が『桃の節句』であることを、蓮華はようよう思い出した。
「ありがとう。家族でない者に、それも長じてから、桃の節句を祝ってもらえるとは」
蓮華は兄弟や近侍たちから祝いの酒を貰い、餅を食(は)みながら金屏風の方をちらりと見た。自分が亡くなり、その後月一族がどのように繁栄したのか詳しく知る由もないが、今の当主は随分と変なものを祀っているのだな……などと、酔いの頭でぼんやり考える。窓外の月が雲間より薄ら顔を出し、庭の桃はいよいよ月夜に美しく、もの言わず咲き誇っていた。
++++++++++
雛人形(物理)菱餅(物理)
26代の石碑にありますが、優れた兄弟どちらかを選ばなければいけない、的な話があったので、恐らく嵐童と27代はふたり兄弟、男2人構成だったと思われます。となると、各種節句のうち端午の節句は何かあるかもしれませんが、桃の節句は無関係です。
せっかく蓮華さんが来たから女性のためのお祝いを、と考えたものの、そもそもどういう風習かまったくわかっていないので、多分こうなるんじゃないかなぁ的な想像100%で書きました。地獄行脚以外の点では、どこかポンコツな兄弟だと愛おしい気もします。
ちなみに文頭にさらっと出てきた年号は特に出典のない二次創作で、当初は寿壊をもじって寿栄とか寿月とかになってましたが、寿壊にわるいニュアンスがついていると嫌だったので栄月(えいげつ)になっています。令和の時のように1月でリセットされると考え、天ツ討伐時点で年号を元年と定め、翌年3月ごろで2年、という計算がされています。
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