月風魔伝その他、考察などの備忘録。
みなさまこんばんは、九曜です。
前回の記事でフラグを立てたので、今回は『手記より・裏表紙』をアーカイブしていきたいと思います。
これはまったく同じ話を、ジーク視点で書いた作品で、書き手によって物語の「裏」がわかる…という構造になっています。手抜きとか水増しじゃないです。
会話文とかも見比べると、ほとんど同じになっていたりするので、結構凝った作品となっております。
前回の記事でフラグを立てたので、今回は『手記より・裏表紙』をアーカイブしていきたいと思います。
これはまったく同じ話を、ジーク視点で書いた作品で、書き手によって物語の「裏」がわかる…という構造になっています。手抜きとか水増しじゃないです。
会話文とかも見比べると、ほとんど同じになっていたりするので、結構凝った作品となっております。
手記より・裏表紙
あの日のことを、書いておこうと思った。
文字なんてめんどくさいしキライだけど、残しておかなきゃいけないと思った。
* * *
あの日も俺は、零との旅の途中、泊まった宿でいつも通りに起きた。
起きるまでは、夢を見てたんだ。砂漠に残してきた、いつも便りをくれる親友が、悲しそうにしている夢。
何とか笑ってもらおうとして、色々声かけたけど、結局アイツは笑わなかった。
今思えば、それって、「虫の知らせ」だったのかな。
「ジーク、手紙が来ていたぞ」
朝の訓練から戻ってきた零に、手紙を渡された。
アイツからの手紙だった。封筒がちょっと膨らんでて、名前もない。何か嫌な予感がしたけど、急いでみやげ物でも詰めたんだろう、と封を切った。
封筒の切り口から、砂がこぼれた。
なんだよ、アイツらしくもねぇ。イタズラか?ってその時は、軽く考えようとしたんだ。
でも、封筒の中身を見たら、そんなの全部ふっ飛んだ。
アイツの、肌身離さずつけているお守りが、引き裂かれて入ってた。
それが、夢の中の悲しそうな顔とだぶって見えた。
「おい……これ……どういうことだ」
緑色の布と紐でできたお守りは、俺も同じものを持っている。
離れても、いつかどこかで会えるようにって、砂漠の砂に水晶をひとカケラ入れて、作ったものだ。
その片方が、無残な姿で、砂をこぼしている。
親友も、こんな風に、無残に殺されたような気がした。
死んだと決まったわけじゃないけど、でも、手ににぎった物からは、そんな感じしかしなかった。
「うあああああああああっ!!!」
俺は叫びながら、握りコブシを床に叩き付けた。
そうでもしないと、どうしようもない感情を押さえきれなかった。
悲しくて、つらくて、怒りもあって、親友がもうどこにもいないっていう、むなしい気持ちまでこみ上げてきた。
俺は一人になりたくて、部屋を出た。
宿の玄関まで来た時に、とにかく誰もいないどこかへ、って思って、開けた扉も閉めずに飛び出した。
町の出口、大門まで一直線に走った。
途中誰かと何度かぶつかったけど、謝ってるヒマなんてなかった。そもそも、ぶつかったのに気付いても、相手は何メートルも後ろにいた。そんな速さで走らなけりゃ、気が済まなかった。
大門を出て草原を抜けて、途中から涙が止まらなくなって、泣きながら、叫びながら走った。
草原の向こうの森を超えると、川原に出た。
川を飛び越える気にはなれなかったし、そこには誰もいなかったから、走りすぎてガクガクいってた足をついて座りこんだ。
お守りも封筒も、どっかに落としてきたらしいけど、そんなもの見たらますます悲しくなるから、むしろ落として良かったと思った。
それからずっとうずくまって、声がかすれても、覆面がしぼれそうなぐらい涙を吸っても、俺は泣き続けた。
こんなことになっても、ここにいて、アイツのために何もできなかった自分を責めた。
俺が旅をしてなかったら、俺があのまま近くにいたなら、俺がこんな性格じゃなかったら!
後悔してもしきれなくて、泣き疲れて声を止めても、またしばらくするとすぐ涙が出てきた。
どこからこんなに涙が出てくるんだってぐらいで、一生分泣いたような気もした。
「ジーク……探したぞ」
「ひぐ……零……?」
近づいてくる足音とともに、名前を呼ばれた。呼んでいたのは零だった。
俺を探しに来たらしくて、いつもは冷静な鋭い目つきが、不安そうなものに変わっていた。
泣きじゃくってぐしゃぐしゃで、こすってもこすっても涙が止まらなくて、情けないけど俺は、そのまま零に泣き顔を見せるしかなかった。
「零……ううっ……な、聞いてくれよ……」
全部話したら楽になると思って、掠れた声のままで、俺は零に思っていたことをぶちまけた。
朝に見た夢の話。あのお守りの話。親友が死んでしまったかもしれないこと。あの宛名のない封筒は、きっと親友を殺した奴が、見せしめに俺へ送ったんだろうという俺の考え。
「こうしてる場合じゃねえ。行かねーと……早く、西へ……」
本当なら、すぐ真偽を確かめに行きたかった。
死んだと決まったわけじゃない、って思ってたし、親友の顔がまた見れたら、悲しみも疲れも飛びそうな気がした。
でも、そんな事はできるもんじゃない、って思う気持ちもあった。
「ジーク……気持ちはわかる……わかるが、また明日ということもあるだろう……」
走ったし泣く以外してないしで、ふらふらしてる俺の体を、零は抱きしめて支えてくれた。
もういいんだ、明日もある、と言われて背中をさすられて、いろんなものがふつふつと湧いてきて、俺はもう一度、零の胸元で泣いた。
親友をなくした悲しい涙だけじゃない。気にかけてくれた零に感謝する、温かい涙も混じってた。
宿に戻るまで、零はなんか考え事をする顔で、ずっと黙ってた。
俺も、まだ色々なことの整理がつけられなくて、疲れで足ももつれたりして、歩くのすらしんどかったけど、零が肩を貸してくれた。
宿に戻ってから、ようやく今日初めての食事にありついて、すぐに寝てしまった。
* * *
思い出しながら書いたから、変なところとかあるかもしれないけど、だいたいこんな感じだったと思う。
零と別れた後、必死に探したけど、結局アイツはまだ見つかってない。
諦めたくないけど、もし諦めることになっても、俺はもうあんなに酷く取り乱さない、って決めた。
それでもつらくなった時には、これをもう一度読み返そうと思う。
思い出で泣いて気が晴れるなら、それでいいと思うから。
++++++++++
というわけで、こちらが「裏表紙」でした。
ジークと零を書いててよく思うのが二人の思考力や語彙の差で、私は零の方はいつもすんなり書いているんですが、ジークの方は調整によく手間取っています。
今回の話も、同じ話をジークの目線で…何考えてたかな…からスタートだったので、手抜き水増しどころかものすごく苦労した記憶があります。
同じ文字書きの皆さんは、同じお話を「誰か別の人の視点で」書いてみると、面白いかもしれません。個人的にオススメです。
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ゲームを遊んだり、絵を描いたり、色々考えるのが好き。このブログは備忘録として使っています。
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