月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さまこんばんは、九曜です。
今日はUMの書き下ろしのお話『向日葵』です。
我が家の向日葵はもう終わりかけているのですが、ぎりぎりまだ季節的に間に合いそうなので書いてみました。暑いし。
UMクリア後のお話なので、ネタバレが嫌な方は遊んでから読んでくださいませ。
今日はUMの書き下ろしのお話『向日葵』です。
我が家の向日葵はもう終わりかけているのですが、ぎりぎりまだ季節的に間に合いそうなので書いてみました。暑いし。
UMクリア後のお話なので、ネタバレが嫌な方は遊んでから読んでくださいませ。
向日葵
時の当主、二十七代月風魔は地獄の邪神を打ち砕き、月氏の封印により地獄の奥底へ結ばれていた古宮都は、すべての柵(しがらみ)から解放され地上の果てに顕現した。風魔はそこから自力で海を渡り、領地へ無事帰還した。
二十一代当主の月蓮華は地獄の狭間より救出され、当主月風魔の兄である月嵐童は、魂が地獄より呼び戻されたことで、一命をとりとめていた。
さて、これにて地獄がすっかり消えたかといえば、それは否であった。もとより地獄は、罪を犯した死者の拠所(よんどころ)である。現世で悪事をはたらいた者たちは今と変わらず地獄へ行き、裁かれる。月氏は邪神のいなくなった地獄の、新たな獄吏を任されたに過ぎないのであった。そこから逃げ出そうとする魍魎たちをとらまえ、戻したり斬り捨てたり、あるいは何らかの異変がないか調査する。その仕事は月氏とともに永世続くのであると、当の二十七代も感じていた。
二十七代は後世のため、家臣らに献策をつのり、日々その業務に励んでいたが、ただひとつ、二十七代自身が良かれと行っていたのが、古の戦場跡の「復興」であった。地獄の最奥部手前に位置していた戦場跡は、古宮都とともに現世の果てへ顕現していた。漠々たる荒野だったその地を、初代月風魔が最期まで使命を果たした尊い場所を、何とかできないかと頭を悩ます二十七代に、蓮華がひとつ案を挙げた。
「向日葵を植えるのはどうだ?」
「ふう、これで二十か」
野良着に襷掛けをし、玉粒の汗を拭いながら、嵐童がひとりごちた。腰に下げた籠の中の種は、すべて土の中へ植えられ、芽が出るのを待つばかりだ。
「今年で三列目ですね。来年はもう一列、植えましょうか」
風魔は嵐童と揃いの野良着、手ぬぐいでほっかぶりまでして、傍目にはとても「当主様」に見えない。が、分け隔てのない親近感こそ他ならぬ彼の魅力であるから、嵐童も蓮華も好意的であった。
「それにしても、二十一代様。なぜ向日葵を?」
のびのびと花を咲かせている一昨年の向日葵と、うまいこと育たず元気のない昨年の向日葵を眺め比べて、風魔が声を掛ける。蓮華はひとり、作業着ではなくいつもの忍び装束に種籠だけ提げた姿で、答えた。
「向日葵は、その地の邪念、悪しきものを吸い取るという言い伝えがある。私のいた村でも広く育てられ、母上もお好きだった」
そう言い、花を眺める後ろ頭の結い上げ広げた髪が、心なしか向日葵の広がる花弁に重なった。風魔はそうか、と頷きながら、手ぬぐいを頭から取り、顔の汗をごしごしと拭いた。
「こんな土で、よくも育つものだ」
「向日葵は痩せた地でも花が咲き、種をつける。だから、私の村では希望の象徴だった」
砂と見紛うほどきめ細かい土をさらさらと掬ってみせる嵐童に、蓮華がそう返すと、風魔が呟いた。
「希望……」
そう、希望。希望なのだ、と風魔は思った。この寂寥たる光景の原因こそ知らないが、かつて邪神を封じたのも、初代月風魔が封印を施したのも、二十七代風魔が邪神討伐を志したのも、同じこの場所だった。この地に相応しい言葉があるとしたら、希望、なのだと。
領地から遠く離れたこの地へ来るには、船を漕いで三日三晩はかかる。行き帰りともなればくたびれるほどの長旅だが、帰り支度を始めた風魔は、心躍る思いであった。
++++++++++
そんなわけで、戦場跡に向日葵を植えよう、な話でした。
向日葵、一時期は放射線の除染のため各地に植えられていたようですが、残念ながら化学的な効果は立証できなかったようです。悪環境でも育ちやすいのは間違いないのと、トマトを植えるのより絵面が良かったので採用しました。
ちなみに、向日葵の花言葉に「希望」は…ありません。どちらかというと「憧れ」とかなのですが、憧れ要素はたくさん入っているのと、あまり強調しても人対人の感情が強く出てしまうので、とりたてて話題に出しませんでした。
今回の話では、ラスボス撃破→封印の必要なくなる→戦場跡と古宮都が地上に戻ってくる→27代君が自力で領地へ帰還というなかなかの力業になってますが、まあ月氏だし海ぐらい渡るか…ぐらいで書いています。ほんと?
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