月風魔伝その他、考察などの備忘録。
こんな時間にこんばんは、九曜です。
ちょっと体調を崩してしまい、ブログを休もうか考えて色々書いてたところ、なぜかお話が一本書きあがったので置きにきました。
また別のエンディング分岐があるセーブデータです。ネタバレありそうだし遊んだあと推奨です。
ちょっと体調を崩してしまい、ブログを休もうか考えて色々書いてたところ、なぜかお話が一本書きあがったので置きにきました。
また別のエンディング分岐があるセーブデータです。ネタバレありそうだし遊んだあと推奨です。
その剣こそ我が魂なれ
邪神の滅亡によって地獄の大穴は閉じ、館に、村に、島国いくつかしかない世界に平和が訪れた。その代償はあまりに重かったが、兄の分まで背負うて生きる覚悟ができたのは、兄のいのちと引き換えに地獄から救い出された、21代当主・月蓮華の存在が大きかった。
「もうとうの昔に、一度は囚われたこの命。私がここへ救い出されたのは、私にできる事があるからなのだろう」
蓮華は27代当主風魔の、当面の支えとなることを決めた。伴侶とするかどうかは当主の心次第としても、月一族として分かり合えることは多く、何より唯一の肉親だった兄を喪って、目に見えて落ち込んでいた風魔の事を、気掛かりに思ったからだ。地獄行脚という大仕事を終えて、ふつりと糸の切れたように眠る27代当主を、放って置けるような性分ではない。はるか昔から蓮華はそうであった。気立てよく誰にも平等に優しく、だが誤った考えには厳しく接した。
久方ぶりの満月を迎えた晩、蓮華は宝物殿奥の棚に立てかけられた、かつてはそこに存在しなかった一振りの剣に気づいた。本来の目的である歴史書を見ることなども忘れ、夜用の灯りをつけ、ゆっくり手に取った。刀にしてはやや長さがありずしりと重く、鞘と鍔には見事な月の刻印が彫られている。月氏ゆかりの物ではあろうが、自分が館にいた頃、このような見事な刀を見た記憶はなかった。
「やはり、二十一代様も気になりますか」
見入っていた所に声が掛けられ、はたと振り向けば当主の風魔が、灯火に照らされそこへ立っていた。
「これは……?」
「地獄の奥底で拾いました。月一族に代々伝わる宝刀『波動剣』……であろうと」
やや下を向く風魔の顔に、薄暗い影が落ちる。波動剣といえば、蓮華の頃には「今ではどこへとも知れぬ」「失われたかもしれない」といわれた、まぼろしの宝剣だ。それが今、目の前にあり、その在りし場所は地獄の奥深くだったという。顛末を思い返した蓮華は、それ以上は語らずとも良いと言うように、視線を剣に落とした。見れば見るほど、誂えは見事なもので、刀身もさぞや美しいのだろうと思えた。
「抜刀しても構わないか」
「ここでは危のうございます。外へ出ましょう」
風魔に促されて宝物殿を出、中天に輝く満月の下、すらりと刀身が抜き放たれる。しかしその美しさを、じっくりと蓮華は見ることができなかった。月の光を帯びたそれは、溢れんばかりの眩い青白い光を放ち始め、それが一度に弾け散るや――。
「何が起きた?」
一度白んだ視界がようやく元の闇に慣れると、そこには蓮華と、風魔と、もう一人……人影があった。
身の丈は27代と同じぐらいだろうか。燃えるような赤く長い髪を持っているが、その顔立ちは明らかに27代風魔のそれではない。少し色の浅黒い肌と、面長の27代に比べて少し丸顔の、ひょっとしたらもっと若い人相だ。金属板を接いだような硬質の鎧は、27代の鎧や蓮華の肩当てとは質が違うが、見方によっては「鬼の顔」にも見える。否、そのひとは額に「鬼」の文字が刻まれており……。
「ここは、月氏の……館。これが。まるで、夢でも見ているようだ」
蓮華の横では、27代風魔が金魚のように口をぱくぱくさせている。何かひどく衝撃を受けて言いたいことがあるが、言えないといった具合だ。年相応に慌てる様相に内心笑いたくなりながらも、蓮華は代わりに聞いてやることにした。
「私は月蓮華。こちらは現当主、二十七代月風魔だ。あなたは?」
「二十七代……それほどに、時を跨いだのか」
見つめ返した瞳は月光を透かしたように薄青く、どこか達観したように穏やかな光を帯びている。続けて、やや厚い唇がちいさく動いた。
「信じられぬだろうが、俺は、月風魔だ」
* * *
地獄に眠る邪神を世に出すまいと、その奥底まで出向いて、波動剣を楔とし強力な封印を施した。生身の肉体が滅ぶのを防がんと、我が身を石に変えてまで行った封印の儀であったが、地獄の過酷な環境ではついぞもたぬと悟った。ゆえに、いっそ魂を波動剣へ移して、剣となってあの地をずっと守ってきた。その限界を迎えた時になって、新たな封印を施す、いや邪神を討つ者が現れた。
初代月風魔の話をかいつまんで言うなら、そういう事らしい。客間で一緒になって、深夜であることも構わず茶など啜りながら、蓮華と27代はすっかり聞き入っていた。
「波動剣がこの館に戻って来たということは、地獄の楔という役からまったく解放された、ということに他ならぬ。だから、こうして戻って来られたのだろうな」
「しかし、ならばなぜ、今宵抜刀した時に貴方は戻って来られたのです?」
率直な疑問を投げる27代に、初代月風魔は「それが、俺にもよくわからぬのだ」などと言いながら、茶の続きを啜り、出された干菓子を口に放り込んだ。
「波動剣は、鞘でその力の幾分かを封じているらしい。だから、鞘に入ったままでは俺は出るに出られなかったのだろう。まことの所はわからぬが……」
初代月風魔でも、宝剣『波動剣』のことはさほど知らぬらしいと、二人は顔を見合わせる。肩をすくめる動作が合うと、ふっと両方に笑いが漏れて、続ける声が27代よりあがった。
「初代様、このまま館へ逗留していただけませぬか。今や一族も数えるほどになり、平穏とはいえ世を治めるには力が必要なのです。どうか」
そうやって頭を下げた27代の横で、蓮華も揃って頭を下げると、初代月風魔はひらひらと手を振り、答えた。
「お、俺はそんな大層な者ではないぞ。兄の事となれば、それこそ我が事も忘れるような――」
「それでは一緒だな。27代当主」
「えっ!?」
蓮華に意地悪な指摘をされ、肩が跳ねる27代風魔と、驚いたように見る初代風魔の、目の色はそれぞれに違えど、奥底の光が同じように揺れた。月は天辺から緩やかに下りはじめている。晩春のもう温かい風が、これより始まる新しい日々の予感を告げていた。
**********
そういうわけで、館に人が増えた場合のエンドです。波動剣拾ってきたら初代様だった件について。
そういえば、ちょっと前に【オレカ二次創作】よく切れる男という作品をアーカイブしていますが、この話はそれに近いものがあります。まあ波動剣の波動の色は魂と同じ色なので、魂入っててもいいかなぐらいの…記事内に関連する考察とかも挙げているので、「剣だと思ったら人」が好きな人は考察まで読みに行くと楽しいかもしれません。
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