月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さんこんばんは、九曜です。
久しぶりに昔よく聴いていた曲を聴いたら、何かそれらしいのを書きたくなってしまったので、今回は短いお話を収録することにしました。
私のお話はゲーム体験からのインスピレーションの次ぐらいに、曲からのインスピレーションが多い気がします。
クリア後の当主の話ですので、ネタバレ大前提です。大丈夫な方はお楽しみください。
久しぶりに昔よく聴いていた曲を聴いたら、何かそれらしいのを書きたくなってしまったので、今回は短いお話を収録することにしました。
私のお話はゲーム体験からのインスピレーションの次ぐらいに、曲からのインスピレーションが多い気がします。
クリア後の当主の話ですので、ネタバレ大前提です。大丈夫な方はお楽しみください。
標
地獄の最奥に巣食う、邪神・天ツ外主との死闘が終わった。二十七代当主月風魔は、精も根も尽き果て膝崩れの姿勢のまま、ただ息をついていた。
背後で何かの機械音がしたが、もはや顔を上げることさえかなわない。視界が白に黒にちらつき、霞んでいく。
月一族の使命は、当主の果たすべき「務め」は、これが根源であり全てであるのだと、なぜだか悟ることができた。
幕が閉じようという今、なぜこれ以上足掻き、苦しむ必要があろう。先立った兄には、命を粗末にしたとこっぴどく叱られるに違いない。それもまた、いっそ喜ばしからずやと、足より力が抜けた。
倒れた地面は氷に覆われており、冷たい。その地面の一部になるように、冷えてゆく総身を考えながら、目を閉じた。どんな夜よりも暗い闇がそこにあった。
闇の中に、青白い光が一筋、迸(ほとばし)った。
それらは無数の光となり、星のようでありながら、ぐるぐると天にいくつもの円を描いた。自分は静かに眠ろうとしているのに、これでは眩しすぎると思っていると、突然地を衝くような振動が訪れ、驚き、覚醒した。
がばと起きた風魔が辺りを見回すと、邪神の気配は消えたまま、古宮都全体がうなるような音を立てて、激しく揺れていた。天井からは溶け落ちた氷がばらばらと降りかかり、床面も劣化した箇所から次第に崩れ始めている。
これで終わるのだ、という諦めが、生きねば、という焦りに変わった。されど、思うように動かせぬ足を引きずり、武器の刀を杖代わりに突いているこの状態で、いかようにして助かろうか。
思っていた矢先、青白い光が、今度ははっきりと見える筋を描いて、床上を滑っていった。通路は一本道のはずだが、光は左右に大きく揺れながら飛んでいったので、どうにか同じ道筋を辿ってみると、光の通らなかった通路の右端が大きく崩れ、奈落へ落ちて行った。
この光は何なのだろう。少なくとも、自分を助けてくれようという何かなのだと、風魔は気力体力を振り絞り、光る轍を無心で追いかけた。光の通らなかった道はことごとく崩れ、塞がれていたが、示された道は歩くことさえできれば、無事通ることのできる道ばかりであった。
ふっと光の潰えた後で後ろを振り向くと、古宮都の入り口であった大空洞が崩れ落ちてゆくのが、すぐ目の前で見られた。
巻き込まれずに済んだ安堵から、冷静な思考が戻ってくる。次はいかにして、この地獄の深層より地上へ戻るかだが、崩れた古宮都を背に歩き出すと、それにもまた道筋が見えた。
「『波動剣』……」
初代月風魔が千年の間、古宮都を、邪神を封じるために、そこへ突き立てられていた波動剣。
この場所で、邪神に囚われ立ちはだかった兄と剣を交え、波動剣の霊力を以てこれを打ち破ったのは記憶にまだ新しい。刀身に青白い波動を宿すそれは、持ち主の心に呼応して強大な力を発揮するという。
月一族の当主が戦により発する青白い波動は、鬼人の光といわれ、名の通り人ならざる当主の血がそうさせるものであるだとか、禍つ光だとか言われてきた。事実、当主は魍魎の力を取り込むことで代々戦う力を強めており、もはや魍魎と変らぬだとか、いずれは鬼になるだとか、まことしやかに囁かれている。
果たしてそうなのだろうか、と風魔は思った。自分をここまで正しく導いた、波動剣の青白い光は、いずれは人ならざるものとなる存在が放つ禍つ光なのか?……否、と声で否定する代わり、風魔は剣を引き抜き片手で高く掲げた。
この光の色は、よく見たあの光に似ている。標(しるべ)となり、一族の魂を導く――
風魔は目覚めた。そこは月氏の館で、四つの灯火に囲まれた当主の間で、よく見知った場所であった。
誘われるように戸外へ出てみると、館から忌地へ通じる鳥居より、漏れ出る瘴気はおさまり、ぴんと空気が澄み渡っていた。武器台より、戎具を片付けてはじめた侍女と目が合った。
「お帰りなさいませ、当主様。よくぞご無事で」
++++++++++
これは分岐nにあたる地獄から帰還する時の話なんですけど、そもそも帰る気がなかったんじゃないかな→でもやっぱり帰らなきゃってなったんじゃないかな→なら何らかの力が助けてくれる気がする!となり、こういう流れになりました。
月一族と「青白い波動」は切っても切れない存在だし、なんかポータルも青白いので波動剣で同じことができてもおかしくないな!ヨシ!という感じです。波動剣は便利グッズか何かか。
本編はエンドレス地獄ですが、ちゃんと終わる話ですので、帰還後もいろいろ終わったことがわかる描写にしています。終わってないとむしろホラーになってしまうので、そっち方面は得意な人に任せるとして、一件落着!を書きたかったのでした。
どうでもいいですが、これ書くのに流しているBGMは『夢轍』でした。どっちかというと『時空のたもと』のワードの方がたくさん使われている気がする。
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