月ノ下、風ノ調 - 月風魔伝祝誕ワンドロライ2025終了しました 忍者ブログ
月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さんこんばんは、九曜です。
今年も毎年恒例、月風魔伝のお祝いワンドロライ企画が終了いたしました。
ご参加、応援ありがとうございました!
次回ワンドロライ企画は、来年の2/10および2/17、月風魔伝UMの発売日編になる予定です。予定は未定。

     
さて、7/7の主催の作品はワンライです。画像化したらなんとか4枚に収まりました。
お題にせっかく『地獄の住人』を設定したので、それで一本書いてみようと思い、邪鬼をけしかけてくる例の男についてお話を作ってみました。
一時間という制限時間の内なので、ALL捏造エピソードみたいになってますが、追記にテキスト版も載せておきますので、良かったら見てやってくださると喜びます。






邪鬼と男


龍骨鬼の支配下にある四島のひとつ、狂鬼島。目下に海を臨み険しく連なる断崖と、荒れて痩せた焦土の広がるこの島で、男は身の丈の数倍も大きな魔物を連れ、朽ちた社(やしろ)の前に座り込んでいた。

男の顔は真白いが、不健康な肌色ではない。つるりとした骨の顔は皮膚に覆われておらず、落ちくぼんだ黒い眼孔と鼻腔、唇のない剥き出しの歯を持つ、骸骨男である。額にかけた白い三角の頭巾は、本来かれが浄土へ渡るための礼装であったが、龍骨鬼の配下に堕ちた今となっては、単なる装身欲を満たす小道具と成り下がっていた。
白の死装束の代わりに、龍骨鬼の手下の証として賜った黒紫の衣を着込み、袖からは骨ばかりの白い手が覗いている。
その手で木の幹ほどもあろうかという魔物……邪鬼の脛をさすり、男は言った。

「今日は一段と雲が黒い。まったく、良い天気だなあ」

生前の男は欲深かった。
欲のあまり、家族の金を使い賭博をし、時に誰かの金を盗み、とうとう道行く商人の馬に蹴られて死んだ。さもありなん、因果応報だと囁かれ、遺骨を引き取ろうという家族は誰もおらず、無縁仏の集う地方の寺へ送られた。
死後裁かれ、地獄へ堕ち責め苦を受ける段となって、地獄の鬼より「責め苦を受けずに済む方法がある」と聞きつけ、男はどこまでも自分本位に救いを求めた。
その方法とは「龍骨鬼の配下として邪鬼と鬼面符をあずかり、通行人の管理をする」ことであった。
生前、まともな仕事をする事もなく、誰かに仕えることもなく、ましてや何かを預かるなどという事もなかった。男は困り果てたが、地獄で数百日にわたり火炙りにされるよりはましだと考えた。
男は「人間としての顔」を手放すことを条件に、龍骨鬼の配下のひとりとなった。

邪鬼が来てから、男のくらしは一変してしまった。
身の丈の2、3倍はあろうかという魔物がズシンズシンと足音を鳴らして現れた時は、慌てて近くの枯れ木の陰に隠れたりもしたものだが、邪鬼はくんくんとにおいを嗅ぐ仕草をすると、一直線に隠れた男の所へやってきた。相当鼻が利くらしい。
言葉は発さず、大顎の目立つ獣の口から時折吠えるような、あるいは唸るような声を出す。甘えていれば相応の少し高い声になり、不機嫌であればグルル、と喉を鳴らすような声が漏れる。男は犬猫なぞ飼ったこともないが、まるでそれらのようだ、と感じた。
機嫌が悪いと、蹴られたり、噛みつかれることもあった。そのたび男はコラッ、とか馬鹿、とか言いながら、ゲンコツを作って邪鬼の向う脛あたりを叩く。が、骨だけとなった手では痛くもかゆくもないらしく、結局邪鬼の機嫌が直るまで、蹴鞠のように蹴飛ばされていたりした。死者としての体に痛みはあるが、死者がさらに死ぬことはないらしく、男は数日も経てばけろりとその事も忘れた。

邪鬼を飼う男の元へは、狂赤鬼、亡霊、生きた人間、あるいはその他の地獄の住人が訪れて、鬼面符を求めてきた。龍骨鬼配下より男に指示されたのは「邪鬼と戦わせ勝った相手にのみ、鬼面符を渡す」ことである。邪鬼はほとんど相手を圧倒するが、時に負け、その際男は住居として貸し渡された荒れた社の奥へ、鬼面符を取りに行くのであった。
負けた後邪鬼は地面にうずくまり、まるで猫が縁側で丸くなるように縮こまるが、そんな格好でも男の背丈をはるかに超える。いたわるため撫でてやろうにも頭に手など届かず、数日も経てば、また元のように元気になって、「門番」としての役目を果たすようになるのだった。

「なあ、邪鬼。おれはいつまで、ここで暮せるのだろうな」

地獄の責め苦は数百日と聞くが、もう年月を数え忘れるほど、男はこの社にいた。
同じことをするようで、同じにはゆかぬ日々。笑い泣き、龍骨鬼とかいう顔も見た事ない魔王のために、こうして邪鬼と暮す日々。
生前、金を盗み、人を騙し、殺し以外は何でもしたような男が、邪鬼の隣では、たんなる一介の「魔王の手下」で「地獄の住人」であった。
邪鬼はやはり言葉を発することができない。静かに鳴き、傍に寄りそうように座って、首を傾げて男を見下ろした。からん、と社の本坪鈴が鳴った。

「おっと、客人だ」

邪鬼も鈴の音に立ち上がる。社の鈴は鳴らさずとも、誰かの来訪に合わせて勝手に鳴るという、ふしぎな仕組みで動いていた。されこうべの眼孔の奥に、うっすらと赤紫の光が灯る。
男が社の前へ出ると、紫色の鎧に赤い髪の、腰に刀を提げた武士がいた。どうやら地獄の住人や亡霊などではなく、まだ生きている者のようだ。これは邪鬼に食わせ甲斐があると、男は声をかけた。

「ひっひっひっ。おぬし、鬼面符が欲しかろう」


#月風魔伝祝誕創作1h一本勝負2025



++++++++++

月風魔伝UMを遊んでいて、魍魎って案外表情豊かなんだろうな、を感じるので、邪鬼もなんかそんな生き物…いや死に物なんじゃないか、を考えたときに、この話が思いつきました。
個人的に二択のどちらを選んでもひどい目に遭う(Noの方は言葉の暴力)プレイヤーだったので、ぜんぜん許せる相手じゃないんですが、龍骨鬼の手下として邪鬼を抱えているのだから、相応の理由があるんだろうな、と想像しました。
結局「責め苦を負い成仏することができなくなる代わり、邪鬼と鬼面符をあずかる」という、本来は業が深い役目を、自分本位に考え選んでしまう…という性格付けになりました。なおかつ、生前は生きるため、楽しむためにあらゆる手段を講じていたのが、生きる必要も楽しむ必要もなくなり、ただ邪鬼と暮らすうちに悟っていく、そんな変化を書きたかったんだと思います。
邪鬼は気持ちペット感つよめに書いてますが、なんかの創作とかでペット扱いとかよく見たりもしていたので、実際ペットだったら面白いな、という案もありました。それと男の性格を両立しつつなんとか話をまとめたかったので、こんな流れになっています。

今回は一枚目の鬼面符の話を書いているのですが、過去のワンドロライ企画では三枚目の鬼面符の話を書いていたりします。この話とは直接つながる感じにしていないので、あちらはあちらで独立した設定付けとなっています。
何らかリンクさせていたら面白かったのですが、一時間で過去関連作品の確認までするのは無理だったので、ひとまず企画作品ということで。

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