月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さんこんばんは。
ブラウザのバグなのか何なのか、書いてた記事がまるごと消えまして、意気消沈中のわたしです。
いつもは予めメモ帳に書いているのに、こんな日に限ってよくも…。
書き直していると日付を跨いでしまうので、また過去作を掘り出してきました。
今回は「オレカバトル深夜の1時間真剣文字書き」タグで出した作品です。
時節的にはものすごくハズレて(七夕)いますが、当の七夕前後はずっと風魔君生誕フィーバーしてたのでしょうがないです。
追記からお楽しみください。
ブラウザのバグなのか何なのか、書いてた記事がまるごと消えまして、意気消沈中のわたしです。
いつもは予めメモ帳に書いているのに、こんな日に限ってよくも…。
書き直していると日付を跨いでしまうので、また過去作を掘り出してきました。
今回は「オレカバトル深夜の1時間真剣文字書き」タグで出した作品です。
時節的にはものすごくハズレて(七夕)いますが、当の七夕前後はずっと風魔君生誕フィーバーしてたのでしょうがないです。
追記からお楽しみください。
「たなばた? 何だ、それは」
その日は7月7日。
空が茜色に染まる頃、風魔は今日の宿に戻る帰り道で、顔なじみである義賊ゴエモンと再会していた。
ゴエモンは今夜、風隠の森の広場で開かれる「たなばた」の祭りに顔を出すという。
しかし、風魔はその祭りの名を知らなかった。兄の仇討ちのため東奔西走しているせいというのもあるが、どうも風魔の住んでいた場所に、そのような風習がないらしかった。
「何だ風魔、お前琉球の生まれだろ? 知らねえのか?」
「聞いたこともないぞ」
琉球という地については、ゴエモンもある程度、知識がある。
青い海、白い砂浜、暑い気候。南国の植物が生い茂り、珍しい生き物などが生息するちいさな島国だ。
その話をすれば噛み合うのであるから、琉球にはそもそも「たなばた」の慣習がないのだと、ゴエモンは考えた。
「そうかー……七夕っていうのはな、短冊っていう、こんな細い紙に願い事を書いて、笹っていう植物に吊るす行事なんだ」
「願い事を……植物にか?」
「そうだ。まあ、叶うか叶わないかは、気休めみてーなモンだと思うけどよ。何か書きに行くのも、なかなかオツだと思わねえか?」
「……難しそうではないし、俺も行ってみるか」
まるで体験したこともないが、何でも経験しておくに越したことはない。
同行を申し出ると、ゴエモンは上機嫌で快諾してくれた。
夜の帳が、赤かった空を少しずつ、地平線へと追いやっている。
西の空を見上げると、ひときわ明るい一番星が、きらりと輝いていた。
* * *
祭りの会場は、人の出が多く屋台などもちらほらと見え、大変盛況しているようだった。
赤と白の提灯が、まるで祭り囃子に浮かれるように、楽しげに揺れている。
とは言え、夕飯はとうに済ませてきたから、そちらにあまり用はない。
広場の中央、人の集まりが激しい一角に真っ直ぐ向かおうとすると、襟巻を引っ張られたらしく首元が絞まった。
「ぐえっ!?」
「オイオイ、そんな慌てなさんなって。屋台は見ないのか?」
「俺はもう、食事は済ませてきたのでな。あと、襟巻を引くのはやめてくれぬか」
「はーあ……風魔、お前ってホント、真面目だよなァ……」
ため息をつき、手を頭の後ろで組むゴエモンだったが、風魔の行動にはある程度理解もできる。
残念なことに風魔には「余裕を持って祭りを楽しむ」という思考が備わっていないのだ。
情がないわけではない。今回は「短冊を書いて吊るす」という大きな目的があって、それを果たすのが最優先なのだろう。
目的がひとつあると、他のことはほとんど何も見えなくなってしまう。だからこそ、これほどまで兄の仇討ちにこだわり、宿敵を探して諸国を奔走できるわけであるが……。
短冊を書かせてからでもいいや、と、ゴエモンは自分が折れることに決める。
「まあ、じゃあ先に短冊を書きに行くか。笹はあれ、広場のど真ん中にあるやつだ」
ゴエモンが指差す方には、緑色の鮮やかな、たくさんの細い葉をつけた植物があった。
この広場に元々、植わっていた植物らしく、近づいてみると根を張りそこに群生しているのがわかった。
節のある幹を見て、風魔は思い出したようにつぶやく。
「砂糖黍みたいだな……少し葉や枝のつきが違うが……齧ったら甘いだろうか?」
そんな一言に噴き出しそうになるのを堪えて、ゴエモンは風魔を短冊の置かれている一角へと案内する。
そこでは子供大人、老若男女が入り乱れて、備え付けられた筆と墨で、短冊に願い事をしたためていた。
風魔も筆と短冊を一本ずつ確保したが、いざ紙を前にすると、何を書けば良いかと考え込んでしまう。
「技能の上達とか、そういったのがいいらしいが……まァ、深く考えないで好きに書くんだな」
ゴエモンは筆をちゃっちゃかと動かし、サッと一枚の短冊を完成させた。
その表面の文字を読み上げ、風魔は目をぱちくりさせる。
「『天下の宝器を盗む』……これではまるで、犯罪予告だぞ」
「い、いいじゃねぇか。何たって、義賊のゴエモン様なんだからよ!」
風魔の冷静すぎる指摘に、返す言葉に困ったゴエモンは、その短冊をサッと笹の適当な箇所に結んでしまった。
夜風に泳ぐ何本かの吹き流しは、色とりどりの美しい飾りにも見える。
ゴエモンの『犯罪予告』も、その中に涼しい顔で紛れているのだろう。
「よし、ならば俺は」
ようやく決心のついた風魔が、筆先を短冊の上に滑らせる。
赤地の紙に黒々と書かれたそれは、ゴエモンにもある程度、予想できた願いであった。
「これを、かければ良いのか」
「なるべく上の方にかけると、叶いやすいって話だ」
「ふーむ……ならば」
短冊を片手にした風魔が、笹を視界に入れたまま一歩、二歩、後ろに下がる。
嫌な予感がして、ゴエモンは風魔から数歩後ずさった。その時だ。
「はああああっ!!」
地面を蹴って翔ぶように駆け出した風魔が、笹の目の前で大きく跳躍する。
そうだ、こいつは大念動波の時、ありえないぐらい高跳びができた――「なるべく上にかけると叶いやすい」などと、言わなければよかったと後悔したが遅い。
群衆はもちろん、皆、突然の出来事にそちらへ釘づけだ。
風魔はといえば落ちながら、笹のもっとも高い場所に短冊をひっかけ、そのまま涼しい顔で地面に着地した。
そういう演出か何かと勘違いした子供が拍手をすると、なぜか周囲も拍手を始めたので、ゴエモンもヤケになってその中に混ざることにする。
『魔王を倒し、兄者の無念を晴らす!』
そんな切なる願いをのせた赤い短冊は、笹のてっぺん、どんな短冊よりも高い場所で、風に吹かれてたなびいていた。
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