月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆様こんばんは、九曜です。
今日は『客人編』の最後の方、メソタニア復興途上のお話のアーカイブです。
前々週に置いた『ただ、そこに』と、それよりだいぶ前に格納されている『コーヒー』の2つの話を回収し、幕引きに向けてまとめた話となります。
なお、相変わらず覇将と予言者はいいカンジnowなので、大丈夫な方だけどうぞ。
今日は『客人編』の最後の方、メソタニア復興途上のお話のアーカイブです。
前々週に置いた『ただ、そこに』と、それよりだいぶ前に格納されている『コーヒー』の2つの話を回収し、幕引きに向けてまとめた話となります。
なお、相変わらず覇将と予言者はいいカンジnowなので、大丈夫な方だけどうぞ。
あまやかな休日
穏やかな雲が浮かぶ青空に、頬を撫でる心地よい風。
宙を渡る鳥のさえずりも、澄んだ空気によく通り耳に響く。
そんな折、ネルガルは見知らぬ街を訪れていた。
道往く人はみな赤の他人、さまざまな顔がすれ違う大通りでは、鎧姿のネルガルも特別、目立ちはしなかった。
その日より、気晴らしにと数日の休暇を与えられ、ネルガルは昼前までベッドに潜って、のんびりと寝呆けていた。
演練にも出ず、政務もしなくて良いとなると、たちまち退屈になった。
昼食の腹ごなしも兼ね、歩いて一時間もかかる遠方の商業街まで来たは良いが、ネルガルには何の宛てもない。
むしろ、宛てがないからここへ足を運んだわけだが、あらゆるものが新鮮に映る中、落ち着ける場所はなかなか、見つからなかった。
一度は崩壊しかけた、祖国メソタニアの復興が始まってから、ひと月にもなろうか。
謀叛人であったはずのネルガルは、紆余曲折あって首の皮一枚繋がり、今はメソタニアに再び仕える身となっている。
己のしでかしたことの大きさを、罪悪感を引きずりながらも、生かされたのだという事実が、ネルガルの足を少しずつ前へ進めていた。
それでも、さまざまのことを思い出すたび、歩みは時に緩慢になり、止まってしまうことすらある。
見かけは豪気で強面で大柄、一見とても頼り甲斐のある屈強な将軍。
しかし、正しいと思って誤った道を走り、右腕とまで思っていた家臣に裏切られたことは、ネルガルの心に深く大きなヒビを入れた。
少し小突かれれば、あっけなく崩れ落ちてしまうであろうそれを、体面だけでもと取り繕うのは、決して簡単なことではない。
それを包み隠さず打ち明けられる、かつての直臣はもう、ここにはいない――。
「ネルガル?」
背後から突然名を呼ばれて、ネルガルはハッと我に返った。
くすんで滲みはじめた想いも雲散霧消して、振り向いた視線が紅い瞳をとらえる。
「シビュラ……?」
紫のフードに瞳を模した飾りのある冠、月齢の描かれた金の帯をあしらったローブ。体の右脇に携えた、分厚い『予言書』。
そこに立つ男を、ネルガルはよく見知っていた。
* * *
立ち話も何だからと、近くを探せば適当な店はすぐ見つかり、ここが栄えた商業街であることを幸運に思う。
入ったことのない店ながら、親切なウェイターに窓際の席へとてきぱき案内されて、ネルガルはシビュラと向かい合わせでテーブルについた。
洒落た装飾などはないが、色数の少ない落ち着いた風合いの店内は、くつろぐにはむしろ程よかった。
「まさか、このような所で会うとは思わなんだ。何故ここに?」
テーブルの上に肘をついて手を組み、目だけで品書きを物色しつつ、シビュラに問いかける。
今日ここへ来るなどとはひと言も伝えていないが、相手は何しろ予言者だ。
用事があって会おうと思えば、ネルガルの足取りを追うことなど、朝飯前なのかもしれない。
だが、そんな思惑を裏切って、シビュラの口からはこんな言葉が飛び出した。
「買いたいものがあったが、メソタニアの城下では品切れだと言われた。ここから仕入れていると商人に聞いて、直接買い付けに来た」
テーブルの上に、その品とおぼしき麻袋が置かれる。
それはシビュラが胸に抱え込める程度の大きさで、まるで細かい何かがたくさん詰まったように、下ろした瞬間ざらりと袋の底が鳴った。
絞られた口からぶら下がった、タグの品名をざっと読む……意外な単語が書かれていることに、ネルガルは目を丸くした。
「コーヒー豆……? これは以前、王宮で使っていたものか?」
「そうだ。王宮の国費ではしばらく買えないと言っていたから、自分で買うことにした」
シビュラは続けて、懐から布の包みを取り出す。
同時に、金属の擦れるチャリ、という音がちいさく聞こえた。
入れられているものは、ネルガルにも見当がついた……個別に出される「自由費」だ。
王宮にいればこそ不自由もないが、外遊あるいは視察などで、個人の金銭が必要になることはある。
そうなった時のため、王宮では月に一度「自由費」が支給され、その管理は各々に任される。
よほど悪いことに使わなければ糾弾もされないため、趣味に費やしてもいいし、養育費や交際費、武器の鍛冶料などの足しにする者もいる。
シビュラは、ネルガルと違った立場ながら、今はメソタニア王宮にいる。
以前は客人として、来賓でも迎えるようにもてなされていたが、荒廃した国を復興するにあたり、その一員として―― 一介の予言者ではなく、信に足る人物として、王宮に留まっていた。
政務や軍事の心得がなく、できることといえば雑務の手伝い程度ではあるが、復興途上で人手の足りないメソタニアにとっては、それでも充分だった。
客人だった頃は、宮外の者という扱いで支給されなかったが、ここひと月の滞留で、初めてシビュラは「自由費」の支給を受けたらしい。
そういえば自分も、つい先日支給があったばかりだ、とネルガルは思い返した。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
ウェイターが注文を取りに来たので、決めていた品をまとめて頼む。
見た目若いウェイターの青年は、愛想よく微笑みながら注文を紙に書き付けると、柔和な声で「少々お待ちください」と二人に呼び掛け、店の奥へと戻って行った。
染めのない麻のエプロンの裾が、静かな足取りに合わせてひらひらと揺れる。
王国の接客係に抜擢したくなる振舞いに感心していると、対面のシビュラが小さな紙片を取り出し、何やらぶつぶつと呟きはじめた。
「あとは挽き具と、コーヒーを落とすための器が見つかれば……そういえば、蜂蜜も必要だったな……持ち切れるだろうか」
手元の紙は、買い物のメモか何からしい。
小さいがよく通る声質のため、その独り言はネルガルの耳にも届いていた。
(コーヒー……、か。久しく飲んでおらんな)
まだメソタニアが豊かで、大きな戦もなく、傍らに参謀エンリルがいた頃。
毎朝、食事の最後に出されるコーヒーに、当たり前のように蜂蜜とミルクをつぎ足して飲んでいた。
昼過ぎ、執務室で書類も見飽きてきた時分には、エンリルが自分好みの甘さのコーヒーを淹れてくれたものだ。
そればかりではない。目の前の男……シビュラにも、ほんの数回だが、コーヒーを淹れてもらったことがある。
エンリルから教わったという手つきは無駄のないもので、その作業が楽しいのか、穏やかな表情が垣間見えたりもした。
蜂蜜とミルクの量は多すぎたり少なかったり、エンリルの技量にはとうてい及ばなかったが、淹れてくれようという気持ちだけでも、ネルガルにとってはありがたかった。
もうあの日々は二度と戻って来ない。
しかし、残された大事なものをひとつずつ、瓦礫の中から拾い上げてゆくことはできる。
シビュラが今、過日のようにコーヒーを淹れようと思案しているのも――また。
そんな姿を目にすると、温かなものが胸の内からこんこんと湧き出して、頬杖をついた顔がふっと緩んだ。
「お待たせいたしました。エスプレッソ・コーヒーと、季節のフルーツ・アンド・プリン・パルフェ……です」
注文の品を持ってきたのは、先の青年とは別の、小柄なウェイトレスであった。
彼女は一瞬ぎょっとした顔になって、テーブルについている二人の顔をちらちらと確認すると、その前に大小のカップを置いていった。
ただ、置いた位置は真逆で、シビュラが疑問をぼやきながら、ネルガルの前の小さなカップに手を伸ばす。
「なぜあの店員は、逆に置いて行ったのだろう」
「私が、こちらを食べる風には見えなかったようだな……わからんでもない」
シビュラの前に置かれた、頭ひとつの高さはあるかという甘味を入れ違いに引き寄せながら、ネルガルは苦笑した。
成人男性としては珍しい、無類の「甘いもの好き」であるから、仕方ない部分もある。
宝石のように色とりどり盛られた、フルーツのひとつをすくって、口に押し込む。
甘酸っぱい香りが鼻の奥から広がると、もう少しこってりした甘さが欲しくなって、添えられているクリームにもスプーンをさし込む。
平和な時を味わいながらゆっくり食べていると、自分のカップに口をつけたシビュラが、驚いたように咽せ込むのが見えた。
「ど、どうした。大丈夫か」
ネルガルが身を乗り出すようにして、心配そうに声を掛ける。
客の多い時間であり、周囲の雑談などにもかき消されて、視線が集まらなかったのは幸いであった。
咳がやむまで少し時を要したが、ようやく呼吸を取り戻したように、ローブの体の揺れがおさまる。
もう一度顔を上げた時、シビュラはけろりと平時の無表情に戻っており、その口からは淡々とした答えが返ってきた。
「苦い。喉が焼けるようだ」
「……なぜエスプレッソなぞ頼んだのだ」
「量が少なくて、ちょうど良いと思ったからだが」
この予言者は、世間のことをとんと知らない。
もちろん、喫茶店で出されるエスプレッソ・コーヒーが、特別濃く抽出されたものであることなど、わかるはずもない。
臆せず頼んだものだからてっきり、普通に好んで飲むものかと思っていたが、そうでもなかったようだ。
単純に、あまり喉が渇いていないから少量でいい、とでも考えたのだろう。
ただ、ネルガルもこのコーヒーには縁がないため、砂糖をたっぷり入れて香りや後味を楽しむものである、ということは知らない。
カップを遠ざけ、それ以上飲むことを諦めたシビュラが少し不憫になって、ネルガルは自分の頼んだ甘味をシビュラの手元まで押しやった。
そこから、フルーツまじりのひと口を掬って、小さく結ばれた口元へ差し出す。
「口なおしに、どうだ。甘いものは苦手か?」
差し出されたものを見て、シビュラは驚いたように視線を上げた。
背の高い器の向こうに見える緑の瞳は、穏やかに笑っている。
勧められて断る理由もないと、少しだけ身を前に傾いで、スプーンに乗ったものを口で受け取る――
「……!」
シビュラの眼がにわかに見開き、紅色の瞳に光が差すのが見えた。
小さく閉じた口が咀嚼を終えて再び開くまで、数秒と待たぬほどだったが、シビュラの表情が細やかに変わるのを見つめていたネルガルには、それが長い時間のように思われた。
「甘味だけでなく、果物のほどよい酸味もある。どれも舌の上で溶けるようだ。後味が強く残り過ぎず、香りもとても良い。このようなものは、これまで食べたことがない」
水が流れ出るように、あとからあとから湧き出すシビュラの感想は、いつもより明るい語調を含んでいる。
それまでメソタニア王宮でも、味のよいものはさまざま出されてきたが、口に出して伝える理由はない、とシビュラは黙ったままでいた。
しかし今、面と向かってネルガルと話している事のみならず――自分にひと口、馳走してくれたのが嬉しくて、その歓喜を何とか言語に換えようとする。
「シビュラはやはり、博識なのだな。私なら美味い、のひと言しか言えぬところを……」
「うまい?」
「え?」
「甘さと酸味があって香りも良いことを、うまい、と言うのか?」
きょとんとしてしまったシビュラを見て、ネルガルもまた間の抜けた顔になる。
元々食にこだわりのない男には見えていたが、誰もが自然に口にする言葉を知らないなどとは、思ってもみなかった。
「も、もしやシビュラ、美味い、という言葉を知らんのか?」
「……わからない。甘さや酸味や苦味はわかるが、うまい、というのは初めて聞いた。一体どういうものなのだ」
エスプレッソ・コーヒーに対する苦味は確かに訴えていたし、味盲というわけではないのだろう。
ただ考えなおしてみると、「美味い」という概念は、そういった味覚よりもずっと複雑怪奇なもので、ただのひと言で言い表せそうにはない。
「えー、と……美味い、というのは……甘味や酸味だけでなく、何というべきか……口に合う、食べて好きだと感じる、と、いうこと……で、あろう。何度でも食べたいと思うものを『美味い』という……のだと思うが」
「そうなのか。ならこれは、うまい、ということなのだな」
不慣れゆえ言葉に詰まりながらも、ネルガルはどうにか適切に説明しようと、身振り手振りも交えて持論をまとめる。
頭が良いこともあり、シビュラの理解は早かった。
「もう一口どうだ?」
もう一度、スプーンですくって差し出してやると、シビュラは躊躇いもせず――遠慮を知らないのか、気に入ったのか――そこにぱくついて、今度はただひと言だけを紡いだ。
「……『美味い』」
覚えたての言葉とともにほころんだ、目の前のよく見知った白い顔に、シビュラの意図を正しく知る……この食べ物が気に入った、のだろう。
ネルガルもつられて、ふっと笑みをこぼした。
次のひと口を自分の口元へ運びながら、窓外を見やる。
大通りを歩く人や、昼下がりの穏やかな陽光や、街路樹の植わった街並みがまるで絵画のように、窓枠の形に切り取られている。
ゆったりと流れる時間の中、自分たち二人も絵画の一部になっている心地で、スプーンの中身を口に押し込む。
華やかで、あまやかで、ほんのわずかに酸っぱい味が、今この時を幸せなのだと思わせてくれた。
* * *
西の空がオレンジ色に染まり始めた頃、ネルガルは外門へ向かう方角に伸びた、大通りを歩いていた。
その隣には、右腕に予言書、左腕にすべての荷物をまとめ入れた頭陀袋を抱えた、シビュラもいる。
無事すべての買い物を終えたシビュラは、無表情でこそあれ、どこか機嫌よさそうな、和らいだ雰囲気に包まれていた。
暮れゆく夕陽が、卵のように真白いシビュラの顔を、あたたかな色で照らす。
「シビュラは、これから王宮へ戻るのか?」
喫茶店を出た後、ネルガルはシビュラの買い物に付き添っていた。
思い返せば、付き添って良かったように思う。
値段も見ずに手に取ったものが、確認すれば目の飛び出るような金額だったり、包装の箱をその場で開けようとしたり……まるで子供でも連れているようだった。
幸い、静止して教えれば理解はしたため、怒鳴られて店から放り出されたりもせず、必要なものはすべて揃えることができた。
「そのつもりだ。ネルガルは?」
シビュラの問いかけに、ネルガルはふうと短く息を吐き、答えた。
「私も、戻ることにした。その大荷物では重かろう、持ってやる」
与えられた休日にはまだ余暇があり、このまま自適に宿をとることも、独りの黄昏時を持つこともできる。
それでもシビュラとの帰路を選んだのは、王宮に戻るだけの気力を取り戻したのと、ほんの少しの、シビュラへの好意によるものだった。
予言の能力を持ち、美顔で決して頭も悪くないのに、世間に疎い変わり者。
そんな男と一緒にいるのは、なぜだかとても楽しくて――。
「助かった。これでは、転んでも片腕もつけなッ!?」
荷物を預かろうとした時だった。
足元のわずかな段差にでも躓いたのか、バランスを崩し倒れ込んだシビュラの細い体を、とっさに抱きとめる。
右腕にしっかと抱えた予言書は放さなかったものの、左手に持った袋が不意に手を離れた。
舗装された石畳の上、ガシャガシャと大きな音を立てて散らばる荷の音が、耳に悪い。おそらく袋の中身は、無事ではなかろう。
「……言った傍から。怪我はないか?」
「……」
シビュラは、何が起きたかわからない、と言いたげに目をしばたいていたが、ネルガルの呼び掛けに気付くと、静かに頷いた。
夕暮れの大通りは人もまばらで、音とともに一斉に視線が集まったことが、何となく気まずい。
落ち着いた頃合いを見て、ネルガルが受け止めていた腕をほどく。
地面に転がっている袋の口を大きく開け、その中を覗き込む……それまで無言だったシビュラの口から、細くため息が漏れた。
「……無駄にしてしまった。もう一度、買いにゆかなければ」
ガラスのポットやら蜂蜜の入ったガラス瓶やらは、やはり割れてしまっており、無事だった金属製の挽き具と麻袋に入った豆だけを、袋から回収する。
また転ぶことを恐れてか、シビュラは挽き具をネルガルに渡し、コーヒー豆の包みを予言書と一緒に、右脇へ大事そうに抱え直した。
人の往来は「事故」の起きる前の様相に戻っている。
特別な助けもなかったが、変に大事になるよりはいいと割り切って、ネルガルはカチャカチャと細かく音を立てる、頭陀袋を左手で持ち上げた。
中で割れたのが不幸中の幸いで、ガラスを集める手間もなく、すぐ近くにあった不要物の集積所に、破片と蜂蜜が混ざったままの袋を置き捨てる。
この町の役人にはとんだ迷惑をかけてしまうと思ったが、素人が無理に分別して、怪我をするよりましだろう。
袋の処分が済むや、シビュラはくるりと踵を返して、外門に向かい始めた。
「シビュラ? 今、もう一度買いにゆくと……」
「手持ちの金銭では、足りない。来月まで待つことにした」
慌てて声を掛けるネルガルに、歩みがとまり、平坦な語調の答えが返される。
復興中というのもあり、王国が個人に支給する「自由費」は決して多くない。
シビュラは知らなかろうが、混乱が起きる前より目減りもしていて、うまいこと遣り繰りしなければ、あっという間に使い切ってしまう額になっていた。
そのわずかな資金を無駄にしたという、遣る瀬無いシビュラの後ろ姿が、ネルガルにひとつの想いを抱かせる。
「足りぬぶんは私が払おう。戻るぞ」
ネルガルはシビュラの腕を掴んで引きとめ、呼び掛けた。
休暇に彩りを添えるためと、持て余していた金銭が、まだ懐に残っている。
先の茶事で多少消えてはいたが、ガラスのポットと蜂蜜の小瓶程度であれば、何とか買えることだろう。
「しかし、それでは、ネルガルが……」
「このネルガル、私用での支出など、大してするものでもない……それに」
振り向いたシビュラの視線が、自然と一点に向かう。
夕焼けの赤に呑まれる肌や鎧や衣類、その中でひとつだけ本来の色を保つ、碧のちいさな瞳。
メソタニア王国の象徴である、エメラルド・グリーンの宝珠にも似たそれは今、静かに優しく輝いていた。
困惑の中に驚きが見え隠れする、紅の瞳をまっすぐ見つめながら……ネルガルはゆっくりと、次の言葉を繋げた。
「また、お前の淹れたコーヒーが飲みたいのだ」
+++++++++++
以上、『客人編』の中でも指折りのあまあまな話でした。
戦闘も大きな?ハプニングもなく、まさに「休日」という感じの、のんびりしたお話になっていればいいな…と思います。
この話(と『コーヒー』)を読むとよく分からない状況として、覇将がド甘党であることが挙げられますが、公式の4コマの方でプリンを勝手に食べるネタがあり、4コマ的ギャグとはいえその意外性と「いや体をよく使うのだから案外甘党かもしれない」という点から私は採用しています。ポケモンのかくとう使いにも甘党結構いますし。
あと、この話において「美味い」の概念を知らないシビュラさんに関してはとても気に入っていて、博識に見える予言者の世間知らずな面がよく表れていると思っています。
ちなみになんか絵があります。レジンキーホルダーにもしたんですが、一度外出時に落として顔真っ青になったのでそちらはもう持ち歩いていません。
フォトフレームに入れて飾られているぐらいには、思い入れの深い作品だったりします。
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ゲームを遊んだり、絵を描いたり、色々考えるのが好き。このブログは備忘録として使っています。
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