月風魔伝その他、考察などの備忘録。
ちらほらと桜モチーフの小物も見かけるようになってきて、春めいた気分も高まる今日この頃。
皆さまいかがお過ごしでしょうか? 九曜です。
これは私の感性なんだと思いますが、風魔君には桜が似合うイメージがあります。
「和風」というのも確かにあるんですけれども、美しく咲いて潔く散る、舞い踊る花びらの合間に風魔君の姿が見えたりします。
女性向け界隈では「桜に攫われそうな」という表現がありますが、そういうのとはまた違います(あちらは「桜吹雪の中に消え入りそうな儚い存在」という意味のようです)
なんかこう、桜色の雨の中にちゃんと両足でしっかり立って、遠い空を見上げているような……。
感覚的なものなので、説明するのも難しいです。
とりあえず私の描いた絵には桜の花びらが舞っているものが非常に多いので、こういうのとか見て頂ければわかりやすいかもしれません。
「いや!他の花が似合うんだ!」という場合はぜひ教えてください。
個人的には曼珠沙華もイチオシです。
この「風魔君と桜」という題材、絵では飽きるほど描いているのですが、文章では一度も書いたことがありませんでした。
そんなわけで、今回はそういったお話を書きまして、ここにアーカイブしようと思います。
悪魔城HDを舞台に、アルカードとマリア、そして風魔君のお話です。
皆さまいかがお過ごしでしょうか? 九曜です。
これは私の感性なんだと思いますが、風魔君には桜が似合うイメージがあります。
「和風」というのも確かにあるんですけれども、美しく咲いて潔く散る、舞い踊る花びらの合間に風魔君の姿が見えたりします。
女性向け界隈では「桜に攫われそうな」という表現がありますが、そういうのとはまた違います(あちらは「桜吹雪の中に消え入りそうな儚い存在」という意味のようです)
なんかこう、桜色の雨の中にちゃんと両足でしっかり立って、遠い空を見上げているような……。
感覚的なものなので、説明するのも難しいです。
とりあえず私の描いた絵には桜の花びらが舞っているものが非常に多いので、こういうのとか見て頂ければわかりやすいかもしれません。
「いや!他の花が似合うんだ!」という場合はぜひ教えてください。
個人的には曼珠沙華もイチオシです。
この「風魔君と桜」という題材、絵では飽きるほど描いているのですが、文章では一度も書いたことがありませんでした。
そんなわけで、今回はそういったお話を書きまして、ここにアーカイブしようと思います。
悪魔城HDを舞台に、アルカードとマリア、そして風魔君のお話です。
「 」
その男の声は聞こえず、背丈は異様に小さいが、身振り手振りで来い、と言っているのがわかる。
身を翻せば、少し長めの真っ赤な髪が、宙で燃え立つ炎のように靡く。
俺は後ろを行くマリアに気を遣いながら――この子が立派な女性となった頃、もう一度会うだろうことは深く胸に秘めながら――その男に続いた。
「本の世界」に引き込まれ、若かりし頃のリヒターやマリア、加えてほかの時代のヴァンパイア・ハンターらが集結する異界に着いてから、新たな戦いにも少しは慣れてきた。
魔物を従える不思議な力を持った男、来須蒼真や、その顔見知りだというヨーコ、ユリウス……彼らはいやに俺に親しげであったが、その理由は今はどうでもいい。
そこにいる者すべてがおそらく、父ドラキュラの因縁に絡め取られて集まったのだろう、と思った。
ところがその中にただ一人、俺の父上のことを知らぬものがいた。
先から先導している、背丈の小さい赤髪の男、だ。
この男は、口を動かしているのはわかるのだが、その声をどうしても聞き取ることができなかった。
幸い、表情やしぐさを細かく読み取ることで、ある程度の意思疎通ははかることができるのだが、名前すらわからないので呼び掛けようもない。
こちらの声は聞きとっているらしく、俺の父上のことを尋ねた時には、困った顔をして首を捻っていた。それゆえ、先の知らない、という結論に至る。
「きゃっ!」
「! 罠か……厄介だな」
足場から落ちそうになったマリアを助けるがてら、目下に広がるものに視線をやり、眉間に皺を寄せる。
そこにあったものは、鋭く削った竹がいくつもまとまって突き立てられた光景で、城でいえばさしずめ、棘のついた床といったところだ。
あの上に落ちたら最後、体のあちこちを貫かれ、刺しどころが悪ければ絶命もあり得る。
先頭を行く赤髪の男は、金属製の重そうな鎧――アックスアーマーのフル・プレートよりは軽いのだろうが――を着ているにも関わらず、狭い橋桁の上を軽々と跳んで渡る。
しかし罠を見たマリアはおっかなびっくり、ちいさく助走をつけては立ち止まっていた。
ベルモンドから分家したラーネッド家の、魔力をもつ身とはいえ、今そばにいるマリアはまだ12歳の少女だ。
類稀なる身体能力も、ベルモンドの血を思わせる部分はあったが、リヒターのような頑強さは備えていなかろう。
「マリア、ここはかなり危険だ。先に行け、落ちそうになったら俺が助ける」
「う、うん」
覚悟を決め、真剣な顔になったマリアが、足場を蹴って高く跳ぶ。
空中を蹴って、もう少し距離を稼ぐ――あと少し足りない、と見極めた瞬間、俺も足場を強く蹴った。
落ちかけのちいさな体を両腕で受け止め、背中のマントを巨大な翼に変える。
大きくひとつ、力強くはばたくと、無事足が向こう側の地面に届いた。
「無事か、マリア」
「……うん! ありがと!」
抱き上げていたマリアを下ろすと、快活な笑顔で礼を述べられた。
人間としては多感な年頃・性別であるだけに、反発されるかもしれないと予想していたが、それは取り越し苦労に終わったようだ。
もっとも、未来のマリアの影がちらついているせい、なのだろうが。
「 」
難路を抜けた俺たちに顔だけを向けて、無事を確認するや、赤髪の男はまた走り出した。
一体、どこへ連れてゆく気だろうか。
水晶のように透き通った、薄い色の瞳から邪気は感じない。
腰に帯びた霊剣から青い波動を放ち、先陣切って敵を蹴散らしてゆく後ろ姿は、頼もしい味方であるとじゅうぶん認識できる。
しかしながら、この野駆けの目的が何なのか、俺は掴みかねていた。
幾分か幅の広い橋を渡り、平野を進み、赤い門のようなものを潜り抜けると、少し遠くに建造物が見えた。
故郷の近くでは見ない様式のものだが、屋根や窓の存在から家屋だろうと察する。
気になるのは、その家の前に大きな鈴のついた太い縄と、読めない文字の書かれた大きな木箱がある点ぐらいだ。
「わあっ!」
不意にマリアが歓声をあげた。
家屋の隣に立っている……幹があるから、樹木だろうか。本来ならば葉の茂っているはずの部分が、愛らしい薄ピンク色に染まっている。
その下で赤髪の男が、幹に手をつき、枝葉の方を眺めて微笑んでいた。
「ねえアルカードさん! これ、すっごくきれい!」
初めて見るが、害のあるものではないのだろう。
近づいてみると、不思議な色の正体は、千々に咲き乱れた花であることがわかった。
風が吹くたび、花びらが数枚ほどけ落ちて、地面も同じきれいな色に染まっている。
マリアは子供さながらに、花の雨の合間をはしゃぎ回っていた。
「これを見せたかったのか?」
イエスかノーかなら、答えられるだろう。俺は男に尋ねた。
男は驚いたようにこちらを見ると、頬を緩ませて、大きくひとつ頷いた。
満開の花天井に視線を戻した男の口が、小さく動く。
きれいなものだ、という声がかすかに、聞こえた気がした。
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ゲームを遊んだり、絵を描いたり、色々考えるのが好き。このブログは備忘録として使っています。
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