月ノ下、風ノ調 - 【オレカ二次創作】どこにもない楽園を:Re 忍者ブログ
月風魔伝その他、考察などの備忘録。
皆さんこんばんは、九曜です。
というわけで、オレカバトルが2になって帰ってくるようです!!
現在まだロケテストが終わった段階のようですが、もし復活するようなら、いつものメンツにも会いにいきたいですね…!!

そんなわけじゃないですが、今回は「二人旅編」から『どこにもない楽園を:Re』のアーカイブです。
前回金の朝、紡ぐ願いをアーカイブしましたが、この話はパラレルワールド軸で起こる、別パターンの「終着」を書いています。
ちなみにこの話、過去に提出した董青の瞳と話題が密接に関わっているので、まだの方はそちらを先に読まれることをおすすめします。
書いた時期が菫青の瞳のすぐ後だったので、どうしても前の話題が抜けなかったというか……近いタイミングで話を書くと、どうも続き物感があふれてしまい、話題が繋がりがちです。

お話は追記よりお読みいただけます。





どこにもない楽園を:Re


さあさ、語りはじめの絃を鳴らそう。
これから語るは、あるしがない男の物語。
寄って見て、聞いてくれたら幸いだ。
おっと、語りを始める前に、みんなにききたいことがある。
「普通」って、何だと思う?
皆と同じであること?平穏に暮らすこと?
……それも、ひとつの答えだな。

砂漠の片田舎に、両目の色が違う男がいた。
右の目は鮮やかなエメラルドグリーン、左の目はくすんだブルー。
肌の色や髪の色は、みなと大して変わらない。
泥棒せず、暴力も振るわず、人を殺したこともない。
それでも「左右の目の色が違う」ただそれだけで虐められた。
男は「普通」になりたがった。
何度左目をくり抜こうかと迷ったことか。
でも、痛いのなんて真っ平ごめん。
とうとう、男は、左目を隠すことに決めた。

左目さえ見えなくなれば。
左右の瞳の色が、違うことを隠し通せたら。
ほかの人からその男は「普通」に見えた、ようだ。
付き合いのできる友も二人できた。
その友たちの話も、簡単にしようか。

一人は、片田舎で知り合った、茶髪の男。
小柄で痩せて、歳をとっても見た目は青年のような若い顔立ちだった。
ただひとつ、その男には正しい色がわからなかった。
リンゴとブドウを、晴れた空と赤色のマントを、同じ色だと言う。
隠した左目がうっかり見えても、なんだか左の目が暗いね、としか言わなかった。
そして「普通」の色が見てみたい、と時々こぼしていた。

もう一人は、旅の途中で知り合った、黒髪の男。
すらりとした長身に、東の国の鎧装束。口元をぴっちり覆面で隠した「シノビ」だった。
「シノビ」には色々と、守らなければいけない規律があるらしい。
自由はなく、ただ里の尖兵として駆り出される日々。
「シノビ」ではなく「普通」に過ごしたいと思う時がある。
……そう呟いたことも、あったと思う。

友二人と過ごして、男は考えた。
「普通」とはなんだろう?
目の色が違っても、見えるものが違っても、住む世界が違っても「普通」じゃないのなら?
「普通」はいったいぜんたい、どこにあるんだろう?

答えを知りたくて、男は長い長い旅に出た。
いくつかの王国をまたいで、森、砂漠、海、遺跡。
きっと、男はまだ歩き続けているんだろう。
「普通」でない左目を隠したまま、「普通」を探して、今日もどこかへ。

それじゃあ、この語りはこれで終いだ。
え? 男は結局どうなったって?
それなら、さっき言ったじゃないか。
この広い空の下、どこかで「普通」を探しているのさ。

*  *  *

……お前さぁ、途中から混ざって見てたろ?
いくら変装したって、その前髪と背丈じゃすぐ分かるぜ。
話の腰を折ってくれなかったのは、ありがたかったけど。
こういうのは「俺様らしくない」か?

……そうだな、お前ってそういう奴だったよな。
ま、久しぶりに会ったんだし、晩飯にでも行こうぜ。奢るからさ。

なあ、零。「普通」って何だと思う?

俺は、どこにでもあるようで、どこにもないもの、って思うよ。
楽園とか……零の国の方じゃ、トウゲンキョウ、っていうんだっけ。
俺もお前もアイツも、結局みんな「普通」じゃなかったのかな、って。

……そっか。そういう考え方もあるか。
でもそれって、俺が意味もなく虐められた、ってこと?
あの時のこと思い出すと、情けねえけど、時々体が震えるんだ。
それに、同郷のアイツやお前に出会えなかったら……って思うと、さ。

……ん? 何だそれ、俺に土産物か?
すげー、夕暮れの青紫を石に閉じ込めたみたいだ。
え、くれるの? いいのかよ?
まさか、投げ銭代わりってわけじゃ……やっぱりな。
ま、もらっとくか。ありがとよ。

……おっと、そいつは皆まで言うな。
へへっ、俺だってたまには、ちゃーんと覚えてるんだぜ。

この石の意味は……『迷わないでまっすぐに』。


++++++++++
この話、タイトルに「:Re」がついているように、実はかなり手を加えています。当時の私の言葉選びがたいへん大雑把だったので、手直し差し替えをたくさんした結果、まあまあ変わったのでタイトルも変えました。
全編ジークの一人称、語り口調で進みますが、シチュエーションとしては「ジークはまだ一人で旅を続けていて、アテもないしいっそ吟遊詩人に転向してみた」みたいな感じです。
へんな奴が街角で下手なギター片手に語ってるので、零としては何事?という感じでそそくさと来てみたら「あっ」て感じです。
ジークへのお土産は、あの日もらった菫青石のお返しです。決して突き返したわけではないのが、ジークの反応でとりあえずわかることになっています。わかってください。

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